これぞ元世界1位 アリヤ・ジュタヌガンが見せた気遣い
◇米国女子メジャー◇KPMG全米女子プロゴルフ選手権 2日目(25日)◇アトランタアスレチッククラブ・ハイランズC(ジョージア州)◇6831yd(パー72)
予選通過を目指して、ぎりぎりの戦いをしていた大会2日目。9番ホールで、同組で回っていたアリヤ・ジュタヌガンとクリスティ・カー、それに渋野日向子の3人が、同じフェアウェイ右のクロスバンカーにティショットを打ち込んだ。
まず、一番遠い場所にいたジュタヌガンが2打目を打ってグリーンオン。カーと渋野の球は、1.5mほど離れて同じような場所に止まっていたが、後ろのカーが先に打つと、その球はダフリ気味で少し先のフェアウェイ付近へ。続いて渋野が2打目を打つと、わずかにグリーンをショートして、手前のガードバンカーにつかまった。
その後、予期しない光景を目撃した。まず、ジュタヌガンが打った箇所を彼女のキャディがレーキで丁寧に均し始めた。カーとそのキャディは、次に3打目を打つ順番だったこともあり、そそくさと次打地点へ向かっていった。そこで、渋野のバッグを担ぐ藤野圭祐キャディが、カーと渋野の打った箇所を均そうとしていると、そこに寄ってきたのがジュタヌガン。
「私がやるから先に行って」という身振りで藤野キャディからレーキを受け取ると、ジュタヌガン自身が、カーと渋野が打ったバンカーを均し始めたのだ。
バンカーから打った選手が、直後に次打を打たなくてはいけない場合、プレーの進行スピードを考えて、他選手のキャディが、当該選手のキャディ代わりにバンカーを均すことはよくあるが、それを選手自身がやるのは初めて見た。まして、かつて世界ランキング1位にもなった選手がやるのだから…(我が道を突き進むカーとの対比で、ジュタヌガンが神々しく見えたほどだ)。
その後、ガードバンカーからパーセーブして、この日の流れを切らさなかった渋野だが、ジュタヌガンの行動が2人に少しの余裕を与えてくれたのかもしれない。いずれにせよ、ジュタヌガンの素敵な気遣いに心が洗われる思いだった。(ジョージア州ジョンズクリーク/今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka