記録的猛暑の欧州熱波体験…冷房のない避暑地・エビアンで売れる扇風機
◇海外女子メジャー◇エビアン選手権◇エビアンリゾートGC(フランス)◇6523yd(パー71)
コース付近にある宿舎に到着すると蒸し暑さに耐え切れず、冷房器具を探した。壁掛けのエアコンしか見当たらず、説明書はフランス語だけ。冷房機能も兼ね備えているのだろう、という甘い考えでスイッチを押した…。
5分、10分と経過。部屋には生暖かい空気が流れるだけ。嫌な予感は徐々に確信に変わった。汗だくで帰ってきたのに、さらに玉のような汗がほおを伝う。思わずベランダへ逃げ出した。外の風は心地良かったが、窓を開けて一晩過ごせば得体の知れない虫が入り込む。寝苦しい夜をやり過ごして、翌朝宿泊施設のフロントに助けを求めた。
ヨーロッパは先週、記録的な猛暑に襲われた。熱波に見舞われ、パリでは25日(木)に42.6度を記録した。フランス気象庁によれば、数十年ぶりに7月の最高気温を更新したという。現地紙は翌日一斉に「記録的猛暑」と一面で報じ、市民に安全の確保を訴えた。パリやロンドン(英国)、ブリュッセル(ベルギー)をつなぐ高速列車・ユーロスターは線路の変形などを懸念し、一部で運休したほどだ。
日本ではミネラルウォーターの名前で有名な「エビアン」の街は標高500mほど(場所によってやや異なる)。7月の平均最高気温は26度。日本で言えば、軽井沢といったイメージだ。スイスとの国境にまたがるレマン湖の南岸に位置し、夏場は避暑地として、冬場はウィンタースポーツを楽しむ家族ら旅行客で賑わうという。
宿泊施設のスタッフのもとに冷房器具を求める宿泊者は多いらしく、「ここには暖房機能しかない。基本的に冷房機能が備え付けられている家庭は少ないと思う。例年必要はない」と困惑気味だ。施設によっては扇風機を貸し出す所もあるというが、冷房エアコンがあるホテルは街に2軒だけ。フランスやスイスでは、市民の暮らす住宅にも暖房器具しかないのが一般的だという。
1年に1度しか訪れない選手たちが予想外の酷暑を見越すのは至難の業。前年までの9月開催時は寒さを感じたというからなおさらだ。22日(月)から連日33度前後、24日(水)、25日(木)は36度を記録した。義兄の故郷がエビアンで、今年2月に訪れたという比嘉真美子は「こんなに暑いなんて。暖かい格好(の服)しか持ってきていないです」と苦笑いした。
民家を借りて宿泊した鈴木愛も冷房がなかったため、スーパーマーケットに扇風機を買いに行ったという。11年ぶりの再訪に「暑いとは思っていなかった。暑さは得意じゃないから、慣れる対策をしないと」と開幕前日は炎天下で6時間近く練習した。
ちなみに、前出の宿泊施設のスタッフは「扇風機が売れるのでは」と推測し、肉や野菜も扱うスーパーマーケットを訪れたという。「うちは扇風機を取り扱っていない。家電屋か、別のスーパーに行ってくれ」と店員には涼しい顔であしらわれ、「たぶんかなり売れていると思うよ…」。酷暑に打つ手なしとばかりに肩を落としていた。(フランス・エビアン/林洋平)