「目標を失った1年」 森田理香子の再出発
23歳の新女王誕生に沸いた2013年の最終戦から1年。森田理香子は「LPGAツアー選手権リコーカップ」を通算2アンダーの10位タイで終え、賞金ランキング16位のポジションで、静かに2014年シーズンの幕を閉じた。
今季開幕を前に、師事する岡本綾子から課されたノルマは賞金ランキング5位以上。前年実績からは、ややハードルを下げた設定に「賞金女王を獲った次の年は難しい。(歴代女王である)岡本さんも分かっていらしたのだと思う」。だが、その目標にも遠く及ばないまま今季は3月「Tポイントレディス」で挙げた1勝にとどまり、中盤以降は優勝者に名前を載せることは叶わなかった。
「精神的な違いが大きかった」とやはり認めるのは、頂点に登り詰めたからこそのメンタルコントロールの難しさ。「自分自身の、女王を獲った次の目標(への意識が)が薄かった。これまでは1番になろうと集中できていたけれど、目標を失ったところもあった。そこが、1番ダメだったところ」。
各スタッツにおいては、パーオン率、パーセーブ率、イーグル数など、やはり大半の数字が昨季を下回った。その中でも森田が言及したのは、ショートゲームの精度だ。「前からのことだけれど、アプローチとパットが下手」と、以前からの課題であることに変わりはないが、数字上は昨季からの低下が見てとれる。
平均パット数は昨季とほぼ同じ(13年/1.7860 14年/1.7831)ながら、リカバリー率(グリーンを外したときにパーセーブをする確率)は、13年61.9134%から14年60.2210%にダウン。全体の順位も36位から46位に下げた。パーオン率(13年/71.5021% 14年/67.9078%)とリカバリー率の低下は、昨季よりも苦しかったスコアメイクを顕著に示していると言えるだろう。
「確かに、成績はあまり良くないです」。不本意ながらも、それは認めざるを得ない。だが、今シーズンを通して定めるべきターゲットを見失っていた森田の姿は、もうなかった。
「技術面では成長できているところもあるし、今年で課題もできた。賞金女王を決めた去年よりも、今年を終えたときのほうがモチベーションは高いし、また、賞金女王を獲っていきたいと思わせてくれた1年になったと思う。来年、さらにパワーアップしていきたい」。
現在の女子ゴルフ界をリードすべき若きホープが、燃え尽きるのはまだ早い。しばし羽を休めたイーグルクイーンは、来年の女王奪還を固く誓った。(編集部:塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。