笑顔で語った…諸見里しのぶシード喪失への覚悟
国内女子ツアーでメジャー3勝を含む通算9勝を果たしている諸見里しのぶが、プロ10年目にしてシード喪失の瀬戸際に立っている。2009年のメジャー2勝で5年間の複数年シードを掴んだが、今年がその権利のラストシーズンだった。経験で築き上げたプライドと、うまくいかない現実とを行き来しながら戦った1年。まだわずかに希望の灯はあるものの、きわめて厳しい現状と向き合いながら、事実上の今季最終戦をティオフする。
「覚悟はできています」。トレードマークともいえる笑顔で、開幕前日のプロアマ戦をプレーした諸見里は、自らの前にある重い現実を感じさせない屈託のない口調で、そう語った。
今季獲得賞金は先週まで7,535,123円で、賞金ランキングは77位。来週の最終戦には賞金上位25位以内など条件を満たした選手だけが出場できるため、今のところ、今週が諸見里にとっての最終戦だ。仮に、今週2位に入って880万円を加算しても、来週の出場権はもちろん、その手前の賞金シード権(上位50位まで)にも届かない。最終戦を終えて、来季の出場権を確定できないのは、プロ転向以来初めての経験となる。
語った“覚悟”は、その現実を受け入れていることに加え、シードを獲得できなかった選手が、来シーズンの出場権を争うことになる最終クオリファイングトーナメント(QT/次年度出場予選会、12月2日~5日)に挑むことも指していた。今季途中には「QTも受けるかどうか考え中です。少し休みたいという気持ちもあって」と語るなど、10年間突っ走ってきた精神的な疲れで、気持ちをゴルフへと向けられなくなっていた時期もあったのだ。
「ゴルフを始めて20年、プロになって10年、いろんな経験をさせていただきました。でも、米ツアーのQTは経験していますが、日本のは未経験なんですよね。こんなにゴルフをしてきて、まだ経験したことがないんだと思うと、なんだかワクワクしてきたんです」
数カ月前とは異なり、うつむくことなく、前を向いて清々しい表情を見せる。
「実は先週(伊藤園レディス)、初日のラウンドが10番スタートだったんです。プロになってから初めて裏街道っていうのを体験しましたが、素直に受け入れたら楽しくなってきて。これも経験だなって思いましたね」
プロ1年目からシード権を獲得し、2年目に初優勝。常に表街道で初日を迎えていた。ギャラリーが増える週末ならいざしらず、平日に裏街道でのプレーは、紅葉深まるコース脇の景色、山を越えて遠くから聞こえてくる歓声など、すべてが新鮮だったようだ。
トップクラスで長年戦った選手は、「こんなはずでは…」とプライドが邪魔をして、QTでも苦戦する例も多い。しかし、今の諸見里は初心に戻り、自然と湧き上がってくるはずのチャレンジ精神を、自分でも楽しみに待っている状態に見える。
今週、優勝をすれば・・・。「結果は全て受け入れるつもりなので」。凛として人生に向き合っている彼女に、この問いは愚問だった。(香川県三豊市/本橋英治)