森田理香子 “控えめに”女王防衛へ意欲
「早く勝ちたいという不安があったので、安心しました」。開幕戦こそ首位タイの好位置を守りきれず優勝を逃したが、1打差リードの単独首位で迎えた「Tポイントレディス」最終日は4打差をつける完勝。後半11番以降は3打差から詰め寄られることなくゴールテープを切った貫禄の勝利に、ホッと胸を撫で下ろした。
前半は、予断を許さない展開だった。5番までパーが続き、6番(パー3)では3パットでボギーが先行。同じ最終組で回る原江里菜に並ばれたが、「もったいないボギーだったけど、7番(パー5)は2オンのチャンスもある」と気持ちを切り替え、狙い通りに2オン成功。即座に単独首位に返り咲くと、2打差リードで折り返した後半13番、14番で連続バーディを奪い、優勝への階段を着実に上がっていった。
18ホールの流れでポイントに挙げたのは、ピンチの連続だった序盤3番(パー4)のパーセーブだ。ティショットを大きく右に曲げたボールはOB近くのカート道まで達し、強いつま先下がりのライから打った2打目はグリーン左のラフへ。幅が広い2段グリーンを横断するように、約25ヤード先に切られたピンを狙ったアプローチは5メートルオーバーしたが、「あれが入ったから耐えられたと思う」と気力でカップにねじ込んだ。
賞金女王という立場で新シーズンに臨む重圧は、この日の安堵の笑顔が物語っている。しかし同時に、横峯さくらと熾烈な女王争いを演じた経験は、森田の精神的な成長を大きく促した。「大変だったことを経験して大きくなった自分がいると思い、自信を持ってプレーできている」。昨年のシーズン終盤は見ることがなかったという周囲の景色も、今年は「けっこう見るようになった」という。この最終日も、「山がすごく高いなあ、と思って見ていた」と笑顔。緊迫した優勝争いの中でも、昨年までは見られなかった“余裕”が森田の中に同居しているようだ。
シーズン3戦目で飾った優勝により、2年連続女王への周囲の期待は加速するだろう。しかし、師事する岡本綾子からは“賞金ランキング5位以内”と、昨年の実績に比べれば抑え目な目標を課されていることもあり、森田自身も「スコアや順位もそうだけど、今は強くて上手い選手になりたい」と、現時点では数字的な意識は薄い。その一方で、「これからも優勝できて、良い位置にいられてチャンスがあれば(狙いたい)」と、女王防衛への想いは、心の片隅にもちろんある。
「不動(裕理)さんも6年連続(2000年~05年)で獲っている。そこまではすごく難しいと思うけど・・・チャンスがあれば目標にしていきたいです」。森田が控えめな言葉を交えつつも、壮大なターゲットに向けた一歩を踏み出した。(佐賀県武雄市/塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。