シード争いで今年もドラマ…藤田幸希が涙の予選突破
いよいよクライマックスを迎えている、賞金ランキング上位50名(今年は永久シード者の不動裕理を除いた51名)の座をめぐる来季シード争い。例年、涙と笑顔が交錯する「大王製紙エリエールレディスオープン」2日目を終えて、2007年から保持してきたシード喪失の危機に瀕している藤田幸希は、43位タイで辛くも予選を通過。クラブハウスに戻った瞬間、安堵の涙があふれ出した。
賞金ランキングは当落線上の同51位。シード確保のため1円でも多く賞金を加えたい1戦で、初日は38位と出遅れた。この日も後半13番で痛恨のダブルボギーを叩き、予選通過圏外へ転落。「もうゴルフをやめたいくらい、きつかった」と精神的にも追い込まれた局面を打開したのが、終盤17番(パー5)で迎えた唯一ともいえるチャンスだった。2オンに成功し、7メートルをねじ込む起死回生のイーグルを奪い滑り込みで決勝へ進んだのだ。
藤田の涙には、現在闘病中の父・健さんへの想いもあった。2011年ごろから肝臓、腸と連鎖的に内臓を壊し、今は血液の病に冒されているという。「何度も余命宣告をされて戻ってきたお父さんがまた戻ってくるまで、何としてもシードを確保したいと思っていた」。
自身もトップアマとして活躍し、幼少期からプロになった後まで藤田を指導してきた健さんは、プロになりたての頃はキャディを務めた大会もあり、トーナメント会場でも常に藤田の傍らにいた。藤田は健さんのことを語る間、何度も何度も声を詰まらせた。
この日は藤田の28回目の誕生日。「ゴルフの神様が最高のプレゼントをくれた」と、涙をぬぐい、劇的な予選通過を振り返った。しかし、まだまだ予断を許さない状況は変わらず、残り2日間で後続選手に抜かれる可能性もある。「父も見てくれていると思う。残り2日間は笑顔で頑張りたい」。ゴルフの神様が後押ししてくれたラストチャンスを無駄にせず、病床の父に朗報を届けたい。(愛媛県松山市/塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。