今季2勝目の古閑美保、切れ味鋭い大逆転劇!
静かに背後から近づいてバックを奪って逃走する……。喩えは悪いが、今日の飯島茜は、さしずめひったくりにでもあったかのような気分だったに違いない。
それほど、あっという間の出来事だった。マスターズGCレディス最終日、12番ホールを終えた時点でトップの飯島は8アンダー。一組前の福島晃子が6アンダーに伸ばしてきていたが、同じ最終組のポーラ・クリーマーは5アンダー、古閑美保は4アンダーで続いていた。
この時点で古閑の優勝を予想した人はいるだろうか?だが、13番、14番で連続バーディを奪った古閑は、その勢いのまま15番パー5で2打目を70センチにつけて楽々イーグルを奪う。トップの飯島とは1打差。続く16番ホールのセカンドショットは、勝利の女神が勝者を天秤にかけるかのように、カップをはさんで飯島と古閑のボールが向かい合った。
先に打つのは飯島。ピンに向かって左側、受けグリーンなのでスライスラインになる飯島のパットはカップ横をすり抜けた。逆にフックラインの古閑。ラインを読みきった古閑は、この3メートルのパットを沈めてバーディを奪うと右手で力強くガッツポーズを作った。返しの1メートルも外してボギーとした飯島と、たった4ホールで5つスコアを伸ばした古閑の順位は、このホールで入れ替わった。
「前回優勝した時(スタンレー)は、大山さんと7ホールのプレーオフをやって色んな感情があったから涙が出たけど、今日は13番くらいからあっという間に終わってしまったので…」と、優勝した古閑自身、涙の出る間もなかったようだ。逆転された飯島も、5バーディ1ボギーの68と悪いゴルフはしていない。「次は勝てるように頑張ります」と、さばさばと振り返った。
相手に傷跡を残さない、まさに名刀のような切れ味。ギャラリーの印象に残るようなプレーをしたい、そういう選手になりたいという古閑。今日の勝ち方は、皆さんの記憶には残るだろうか?(編集部:今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka