古閑を気付かせた師匠の言葉
高校生の頃、清元登子の下に弟子入りした古閑美保。当時は不動裕理も同じ清元門下生として練習しており、初めてその練習する姿を見た古閑は、「休憩もしないし、水も飲まないし、トイレにも行かない。ボールをティアップして打つまでの動きが毎回変わらなくて、まるでマシンが打っているみたいだった」と回想する。
「リコーカップ」の最終日、その不動に対し5打差を逆転してメジャー初優勝を挙げる。最終日はノーボギーの「67」。古閑は、まるでマシンのように隙のないゴルフを見せた。
「自分で考えてやってみたい」と、今年は師匠である清元氏から離れる決断をした。夏場までは結果を残せず苦しんだが、その信念は曲げなかった。大会3日目を終えて単独2位。「昨日は先生によっぽど電話をしようと思ったけど、しなかった」と打ち明けた。
古閑の信念は“神頼みしないこと”。コースに出たら自分しか信じないという意味だ。「キャディと意見が合わなくても、打ったのは自分だし、迷ったのも自分。キャディのせいにはしたくない」。
最終日のスタート前、その清元氏が突然、古閑の目の前に現われた。驚きながらも、「昨日電話しようと思ったんですよ」というと、先生はこう答える。「電話なんて貰っても出ないわよ。コースに出たら一人なのよ」。その言葉が古閑に響いた。「昨日は、先生に頼ろうとした弱い自分が出たことに気付かされました」。
本当の師弟関係とはこういう事を言うのだろう。最近、手取り足取り指導する人は多いが、離れていても影響を与えられる人というのは、とても稀有な存在だ。(編集部:今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka