アジア勢唯一のメジャー覇者 Y.E.ヤンのいま
◇国内男子◇中日クラウンズ 3日目(28日)◇名古屋ゴルフクラブ 和合コース(愛知)◇6557yd(パー70)
2009年8月。ヘーゼルティン・ナショナルGCで行われた「全米プロゴルフ選手権」でアジアのゴルフ史が動いた。韓国のY.E.ヤンが当時、栄華を誇っていたタイガー・ウッズを最終日に逆転しメジャー初優勝。あれから9年経った今も、アジア人で2人目のメジャーチャンピオンは出ていない。
さん然と輝くタイトル獲得のあと、ヤンは米ツアーで苦しんだ。2012年以降はランキングでシード獲得に及ばず年間の出場権を失った。大会ごとにわずかな参戦資格はあるものの、今年、戦いの場として選んだのは日本ツアー。前年の予選会をトップで通過し、2006年以来の本格復帰を果たした。
12年ぶりに迎えた日本でのシーズン。出場2試合目となった「中日クラウンズ」は過去に3回挑み、第1ラウンドで「61」をマークした2005年大会を含めていずれもトップ10で終えた。「ここにくるまでに(スマートフォンで)調べてきたんだ」と好印象のイメージを思い返してコース入り。そして3日目を終えて、首位に2打差の2位にいる。
「もう46歳。オジサンだから」と話すのは昔、覚えた日本語だ。40代半ばにして、以前よりスリムになった体形も努力のたまもの。数年前から両足裏の痛みに悩まされ、「身体が重かったからだと思う」と約3年間のダイエットに取り組んだ。90kgあった体重は現在82kgに。痛みも緩和され、独特のリズムを持つスイングにも力強さが戻ってきた。
現在は、試合の前後で自宅のある韓国・ソウルとの往来を繰り返している。毎週のように国境をまたぐことになるが、「アメリカの移動に比べれば簡単」とさらりと言う。「(拠点にしていた)ダラスからはロサンゼルスに行くにも、ニューヨークに行くにも5時間くらいかかることもある。でも、日本と韓国なら2、3時間でしょう」
昨年の3次予選会から、キャディバッグを7歳年下のミジン夫人に預けて二人旅。「一番(の目標)は優勝することですけど、まずはシードを獲りたいですね」。栄光にすがることなく、今も実直にゴルフと向き合っている。(愛知県東郷町/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw