石川遼直伝 バッバ・ワトソンの楽しみ方
「三井住友VISA太平洋マスターズ」で2010年、12年大会を制した石川遼。昨年も2位フィニッシュを決めるなど相性抜群の大会だが、今年は掲げる目標スコアがいつもと違う。「毎年、僕は通算16アンダーを目指すけれど、今年はそれで勝てる気がしない。18、19(アンダー)というところ」。理由は例年に比べて仕上がりがソフトなグリーンの影響、そして9年ぶりに日本ツアー参戦のバッバ・ワトソンの存在だ。
2011年の「プレジデンツカップ」で直接対決したワトソンは、世界一の飛距離を誇る。米ツアーの昨季のドライビングディスタンス部門では、2位に3yd以上の差をつける平均314.3ydを記録した。それゆえ、予選ラウンドを同組でプレーするレフティについて石川は「バッバはグリーンでタッチが合えば、4日間で20アンダーは超えると思う」と予想。目標を上方修正せざるを得ない。
そんな石川本人が、日本のギャラリーに伝授する“バッバ・ワトソンの楽しみ方”。それはズバリ「飛球線を追え」だ。
「予想以上に球を上げたり、低く打ったり、左右から曲げて打ってくる。僕たちは一緒に回る選手の球を見失うことはほとんどないんです。『だいたいこういう球が出てくるだろう』とか、パー3だったら『何番アイアンで、これくらいの高さで打つだろう』とか…でも、彼はそこに球が飛ばない選手」
ピンクのドライバーで放たれるビッグドライブは、単調な放物線を描くだけではない。3次元で自由自在に操られる弾道こそ、一番の特長といえる。「一瞬、僕らの視界からも外れてしまう。『えっ!?』という感じで曲げてきたり、低い球を打ったり…それをドライバーからアイアンまでやる選手」
だから生観戦する場合のビューポイントは、飛球線の真後ろ。
「ドライバーショットは真横からではスピードでボールを見失うこともある。後方の良い位置が取れたらいいですね。かなりのオープンスタンスが特徴だけれど、そこからスライスだけでなくフックも打つ。『どういう球を打つのかな…?』と見るのが楽しい。だって僕が、そう思ってます。そう、楽しんでます(笑)」
同組の選手はそういうわけにはいかないが、アドレスに入った際、左肩が正面に見えればベストだ。
一方、自身の調子は「あんまり良くない」と正直だ。「先週の終盤から良くなくて…毎日試行錯誤している」。ドライバーショットの不振を引きずったまま御殿場に来た。
ただ「今年はラフからフライヤ―してもボールは止まる。林に入らなければ攻めていける。ここでは優勝争いできるかどうかと、ドライバーの調子は必ずしも直結しない」と自信ものぞかせる。「(ワトソンは)全然違うタイプのプレーをするからこそ、自分はきっぱり攻め方を決められる。飛距離以外の部分で対等に戦えるようにならないと」。ファンと同じ目線でモンスターを眺めても、タイトルだけは譲らない。(静岡県御殿場市/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw