最年少賞金王から10年 石川遼の異なる“輝き”
◇国内男子◇長嶋茂雄招待セガサミーカップ 最終日(25日)◇ザ・ノースカントリーゴルフクラブ(北海道)◇7178yd(パー72)
石川遼が3シーズンぶりの優勝を飾った「日本プロ選手権」から1カ月半。初めて2大会連続でタイトルを手にし、最終組で大ギャラリーの歓声に包まれる姿は、常勝を誇ったころを彷彿させるものだった。4打差をつけての完勝だけではない。賞金ランキングでも8年ぶりにトップに立ち、再びツアーの中心に戻ってきたことを鮮明に印象づけた。
10年前もうまかった
シーズン複数回優勝は2015年以来で、4季ぶり。これから秋にかけては石川の歴代優勝大会が続く。自己最多の年間4勝を挙げてツアー史上最年少(18歳80日)で賞金王に輝いた09年の再現への期待も高まってきた。
27歳になり、石川は10年前の自分を次のように顧みる。「2009年もうまかったとは思う。ドライバーは今よりも曲がっていなかったし、良い状況からアイアンでピンを狙えることが他の選手よりも多かったので、スコアも良かったと思う」
リスクを恐れずに1Wを強振し続け、予想外のルートからコースを攻略する。同年のバーディ率(1ラウンド当たりのバーディ数)4.42は1位を記録し、平均ストロークでは唯一の60 台(69.93)をマークした。アグレッシブにバーディを奪うプレースタイルで、多くのファンを魅了した。
変わったのはアイアンの精度
そんな当時の自身と向き合い「変わってきたところ」と話すのが、アイアンショットの精度の向上だ。その具体例として挙げるのが、「安定してプレーできるようになった」というパー3での内容。「若いころはパー3が苦手だったけれど、アイアンの精度が2009年から変わってきた。今が人生で一番いい状態にあると思う」と比較する。
実際にデータを見比べてみよう。2009年(22試合)のパー3でのバーディ率は0.14で、年間の累計スコアは通算15オーバー。対して今季(6試合)はツアートップの0.25で、累計スコアは通算10アンダーを記録している。これらの数字が、石川の言葉を明確に裏づけるのだ。
パワーで大きく劣る海外選手との差を埋めるため、かつては1Wの飛距離を追い求めた時期もあったが、今年はアイアンショットの精度にこだわって練習に励んできた。この1カ月半もスピンコントロールへの意識を強め、今大会ではその成果を実感する1打も多かった。すべては、2017年を最後に撤退した米国ツアーに再挑戦するための技術を身につけるため。負荷をかけた筋力トレーニングにより、繰り返してきた腰痛の不安も消えた。
新たなプレースタイル
「2009年以降、海外に出ていなければ今の自分の技術はなかったと思う。ドライバーだけはずっと良かったかもしれないけれど、一辺倒の攻めだけになっていたかもしれない。気持ち的にも身体的にも、根本的に考えていることは09年とはぜんぜん違う」
まだ6試合を終えた段階ながら、今季のバーディ率は2009年を上回る4.90をマーク。海外での苦しい経験を経て、10年前とは異なるプレースタイルで新たな輝きを放ち始めた。(北海道千歳市/塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。