まっさらなコースを回る賞金王 「焦らず」で歩む中島啓太の1年目
◇欧州ツアー◇ポルシェ シンガポールクラシック 初日(21日)◇ラグーナ・ナショナルゴルフリゾートC(シンガポール)◇7420yd(パー72)
午前7時35分、中島啓太は1組目で10番からスタートした。誰も踏み入れていない、きれいなコースは、ティショット地点にあるフェアウェイバンカーもそれほどリスクにならない。朝イチのティショットは迷わず1Wを振り抜いた。
組み合わせが成績順ではない予選ラウンド。午前のトップスタートに入るのは、欧州ツアー今季5戦目で2度目になる。常に注目組の中でプレーした昨年の日本ツアーでは一度もなかった。2023年に賞金王となり、今季の欧州ツアー出場権を獲得。1月「ラアス・アル¬=ハイマ選手権」4位で新シーズンをスタートしたが、その後は予選落ちが2試合、2月「カタールマスターズ」33位と中々上位で戦えていない。
「毎週カットラインを見ながらのプレーになっているので、全然良い状態ではないと思う。バーディを獲ったあとに90ydからボギーを打ったり…そういうところです」と、初日は2バーディ、3ボギーの「73」で94位。「状態も体の調子も悪くないけど、全然スコアにつながらない」。異国で毎週コンディションを維持する難しさを、じわじわと感じている。
年間ポイントレースは現在97位。来季の米PGAツアー出場権が得られるトップ10入りを求めて加わった欧州ツアーだが、まずは来季シードが確保できる110位以内を目指している。「年間トップ10に入ってPGAツアーにというのは、まだいける雰囲気ではない。とにかく今は、来年日本に帰ることがないようシードをとること」。2歳年下の久常涼の活躍を耳にするほど、「焦らずに」と心に留めている。
久常は昨季欧州ツアーで1勝を挙げ、ポイントレース上位に入ってPGAツアーに昇格。例年、日本の賞金王の多くが受け取ってきた4月「マスターズ」への招待状は、今年は久常の元に届いた。「久常選手のほうが価値のあるプレーをしたと思う。自分はまだ、良いプレーができていない」と受け止めた。
プロ2年目で日本のトップに立った昨年から、今年はまたイチから新しいことを学ぶシーズンになる。日本では試合で持たなくなったコースメモは、欧州に来てまたポケットに入れるようになった。「練習ラウンドは良い機会」と、今週は欧州4勝のリッチー・ラムゼイ(スコットランド)と回ってアプローチを教わった。
「自分がまだ23歳っていうのを忘れないように。ゆっくり行きたい」と海外でのルーキーイヤーは始まったばかり。初日は正午過ぎにラウンドを終えると、休憩を挟んで午後4時前まで練習に打ち込んだ。最後は外したらやり直しのパッティングドリルで、これが中々終わらない。「焦らずに」。分かってはいても、うまくいかない時期はやっぱりちょっと腹立たしい。時折もどかしそうにクラブを振りながら、黙々とボールを転がし続けた。(シンガポール・ラグーナゴルフグリーン/谷口愛純)
■ 谷口愛純(たにぐちあずみ) プロフィール
1992年生まれ。社会部記者、雑誌の営業その他諸々を経てGDOに入社。ゴルフは下手すぎて2017年に諦める。趣味は御朱印集めと髪色を変えること、頭皮を想って最近は控えてます。