「優勝賞金1億円を目指す!」ネスレ日本マッチプレー選手権の野望
今年、国内男子ツアーが開催されるのは年間52週のうち24週だけ。「それ以外の週は、僕ら選手は無職なんですよ」。こう語る片山晋呉の表情は真剣そのものだ。
自身の名を冠にした第1回「片山晋呉インビテーショナル ネスレ日本マッチプレー選手権」は、松村道央の優勝で幕を閉じた。国内では11年ぶりに行われたプロ同士のマッチプレー大会。優勝賞金は国内ツアー最高額に並ぶ4,000万円で、さらにグローバルチャレンジサポートの1,000万円が加わるため、事実上、今年国内で行われるゴルフイベントでは優勝賞金最高額となった。大会運営でも、インターネットの複数チャンネルでライブ中継を行うなど、低迷する国内男子ツアーとは一線を画し、日本のゴルフ界に新しい風を吹き込んだ大会だ。
「選手は試合があって稼ぐ場所が1つでもあった方がいい立場。選手としては選手の声が一番だし、『やる』って言って実際に行動したことが一番だと思う」と、トーナメントホストの片山は胸を張った。「選手からもメールや電話で“やってくれてありがとう”と言われたけど、それがすべて。僕は一番嬉しかった」。
大会を主催したネスレ日本の高岡浩三社長も、第1回大会の反響には上機嫌だ。「いろいろ新しい試みをやりましたが、良いニュースしか聞こえてこない。特にインターネット中継の反響がすごくあった」。ライブ中継だけではなく、録画も多く閲覧され、BS放送の好視聴率にもつながったと評価する。「(ネットとテレビの)食い合いはないですよ。すごい相乗効果だということが分かりました」。
国内男子ツアーを管轄するJGTOに、事前に話を通したが協力を得るには至らなかったという。「日本の中でトーナメントをするのに、JGTO、PGAの中に入っている必要があるわけではない。伝統は守りながらも、そういうイノベーションが大事。考えが違っても、批判しあうんじゃなく、尊重していただきたい。それがグローバルスタンダードであり、ネスレです」と、大会を主催した意義を強調した。
さらに高岡社長が語ったのは、「優勝賞金1億円」という野望だ。海外挑戦の経費を考えれば、5,000万円の経費でも十分ではないという考えもある。「今回はPR効果も十分にあったし、(出資する)企業や商品のブランドに対してリターンとして返ってくる計算もしています。私どもの考えに同調していただけるグローバルな企業に名乗りを上げていただければ、あと1億、2億という金額は十分に集められると思います」。経験に裏打ちされたビジネスマンが語る言葉は、決して夢物語ではないだろう。
まさに国内ゴルフ界に現れた“黒船”のような大会。国内ツアーで永久シードを持つ片山は「これからもっと(このような大会が)増えていくと思いますね」と、第2回開催にとどまらないインパクトへの手ごたえを語った。
ビッグな賞金を手にした松村は表彰式で、「これからも男子ツアーの応援をよろしくお願いします」とスピーチしていたのだが…。(静岡県袋井市/今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka