日本のナショナルオープンが抱く危機感
17日、JGAにより今年のナショナル3オープン(日本オープン、日本女子オープン、日本シニアオープン)の詳細が発表された。
改めてスケジュールと開催コースを確認しておくと、「日本女子オープン」は10月3日(木)から6日(日)まで相模原ゴルフクラブ/東コース(神奈川県)、「日本オープン」は10月18日(木)から20日(日)まで茨城ゴルフ倶楽部/東コース(茨城県)、そして「日本シニアオープン」は10月31日(木)から11月3日(日)まで麻生飯塚ゴルフ倶楽部/ブルー・グリーンコース(福岡県)となっている。
例年、ナショナルオープンとして国内ツアー最高額の賞金と最大の名誉が用意されている大会だが、グローバル化する現代のゴルフ界では、その地位は世界との比較になる。昨年の「日本オープン」では、ディフェンディングチャンピオンのベ・サンムン(韓国)がPGAツアーに出場するために欠場し、今年の「日本女子オープン」も、昨年の優勝者フォン・シャンシャン(中国)は、同週に中国で行われるLPGAツアー出場を選択し、不在となる。ちなみに、フォンが出場予定の「レインウッド・パインバレーLPGAクラシック」の賞金総額は180万ドル(約1億8千万円)で、「日本女子オープン」の1億4千万円を凌いでいる。また、松山英樹、石川遼の2人も現時点ではPGAツアー出場を優先し、今年の「日本オープン」出場は見送る構えだ。
問題は賞金だけではない。オリンピック出場の基準ともなる世界ランキングに目を向けてみると、昨年の「日本オープン」優勝で久保谷健一が獲得したのは32ポイント。マスターズをはじめとした海外4大メジャーの優勝者に与えられる100ポイントの3分の1にも満たない。のみならず、PGAツアーの平場の試合である今年の「ソニーオープン」を制したラッセル・ヘンリーが得た38ポイントにも及ばないのが現実だ。
女子の場合も同様で、昨年の「日本女子オープン」でフォンが獲得したのは34ポイント。一方で、今年新しくメジャー大会に昇格した「ザ・エビアン選手権」を制したスーザン・ペターソンは100ポイントを手にしている。
世界ランキングポイントは、「賞金額とコンテンツの比重が大きい」と、JGAの3オープン事業推進部副本部長の戸張捷氏は言う。ここでいうコンテンツとは、出場する選手のこと。いかに世界ランキングの高い選手が出場しているか、ということが重要なのだ。
「オリンピックの東京開催に向けて、グローバルスタンダードに則った運営へのレベルアップが必要。それに、日本オープンのレベルを上げて、世界ランキング上位選手の多い大会にして、賞金ももっと高くしていかないといけない」と戸張氏は力説する。そのためには、「日本オープン」で獲得した賞金をPGAツアーの賞金額に加算してもらう、といった劇的な変化も視野にいれ、ロビー活動を強化していかなければいけないという。
危機感渦巻くJGAだが、幸運にも大きな追い風も吹いている。それは、2020年のオリンピック開催が東京に決まったこと。大会の実現に向けては、IGF(世界ゴルフ連盟)を核として、USGAやR&A、PGAツアーといった世界の関連団体とのコミュニケーションが必要不可欠で、その交渉を通じて、日本ツアーのレベルアップやプロモーション、緊密な信頼関係を構築していくチャンスがあるのだ。
くしくも、先週は日米の女子メジャーが同週開催となった。ディフェンディングチャンピオンの有村智恵は日本での出場を選んだが、日本人の有村ですらどちらに出場すべきか深く悩んだことは想像に難くない。一流選手の流出が止まらない欧州ツアーでは、選手の母国での試合には出場義務を課そうとする動きもある。また、2016年にはオリンピック開催の関係で、「全米プロゴルフ選手権」が7月に移動するという話もある。
世界の中でもまれにみる試合数と賞金額を誇る日本の男女ツアーだが、その価値をさらに高めていくには、世界に視野を向けた柔軟な舵取りと、強いリーダーシップが求められている。(編集部/今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka