欧州、米国ツアーを震撼させる日本製シャフト

2001/08/02 09:00

アメリカで販売されるゴルフ用品は、日本のゴルフ用品製造業界に多大な影響を受けている。アメリカのトレンドは、まさしく日本が発端となっているのである。軽くて長いドライバー。巨大ヘッドのドライバー。フェースの薄いチタン製ドライバー。見た目もワイルドなテーラーメイド社のバブルシャフト。タングステンやほかの素材でソールに重量を付加されたアイアン。これら全て、日本で開発された。日本のゴルファーたちは、次々と新しい技術を求めている。日本のゴルフ雑誌は、最新の技術情報でいっぱいだ。ゴルフクラブ製造会社にとって、テクノロジーが消費者を獲得する方法だという認識は、日本において作り上げられ、完成したと言える。

更に今では、日本のゴルフ用品製造会社がアメリカ国内に製造工場を作っている。たとえば、ブリヂストンはPreceptというゴルフボールのブランドによってすでにアメリカ市場で長くビジネスを展開してきている。ミズノやヨネックスも同様だ。しかしながら、日本からの影響として、シャフトほど現在のアメリカのゴルフ市場を騒がしたものはない。とくに藤倉、そしてグラファイトデザインは、アメリカのグラファイトシャフト製造業の新しい2本柱に浮上してきている。両者ともプロ選手や上級者用クラブのメーカーから相当な人気を得ているのだ。

藤倉のアメリカ工場は1995年にカリフォルニア州ヴィスタに開設された。日本でテーラーメイドのバブルシャフトの開発を手がけた後、さらに近くで仕事を進めるためにアメリカに拠点を移した。そのうち、テーラーメイド以外のクラブメーカー用にもシャフトを作るようになった。

「彼らはすばらしいよ」とオリマーゴルフ会長2人のうちの一人、ジェシー・オーティズは言う。「シャフトメーカーにとって一番大変なのは、一本一本の性能のばらつきがないことだ。藤倉は毎回、それができるんだよ」

グラファイトデザイン社はクラブメーカー数社にシャフトを提供しているが、なかでもキャロウェイと関係が深い。キャロウェイのR&D担当代表取締役副社長のディック・ヘルムステッターは、グラファイトデザイン社にアメリカに製造拠点を作らないかとすすめた最初の人物だ。グラファイトデザインの社長ヤギケイスケ氏は1998年、サンディエゴに工場を開設した。

数年後、藤倉とグラファイトデザインは、アメリカのグラファイトシャフト市場においてトップのメーカーにのしあがった。関係者によれば理由は簡単だ。両社ともこだわっているのは品質であるということ。それは、350USドルという値段にも反映されている。

これらのシャフトメーカーを急成長させたトレンドとしてもう一つあげることができる。それは、アメリカのクラブメーカーがカスタムフィッティング・プログラムを急増させたことだ。例えば、PINGWrxを購入したい人は、藤倉やグラファイトデザインを含むたくさんのメーカーのシャフトから、自分にあうものを選んで装着することができる。

「我々のゴールは、最良であることであって、最大になることではない。」と藤倉の社長兼COOであるピート・サンチェズは言う。

「すべてのクラブに適合するシャフトをそろえているのです。ボアスルー用シャフトや、ノーマルタイプ、直径の大きいものなどの様々なシャフトがある。重さも35gから115gのものまであります」

フィル・ミケルソンがツアーチャンピオンシップで優勝した時、またマイク・ウィアがスペインのヴァルデラマ・ゴルフクラブで開催されたワールドゴルフチャンピオンシップを優勝したときに、両者とも藤倉のスピーダーシャフトを使用していたことで、2000年の秋は藤倉にとっては抜群のPRになった。グラファイトデザインも同様の成績をあげている。今年の全米オープンでグラファイトデザインのシャフトを装着したクラブを一本以上、バッグに入れていた選手はは30人以上いた。グラファイトデザインはタイトリストと共同でスチールとグラファイトの組み合わせによるGATシャフトを新たに開発した。

タイトリストは消費者に高く評価されうるシャフトを探していた。グラファイトデザインは二つの素材を使ったシャフトを開発したかった。両者の思惑がかみ合って、ハイ・モジュラス・グラファイトに、樹脂で覆われた鉄のフィラメント素材を使ったGATアイアンシャフトが開発されたのである。

このGATシャフトは最新の複合素材シャフトである。アダムズとトゥルーテンパーが共同で開発したGTアイアンに次ぐものである。GTシャフトはスチールシャフトの先端にグラファイトのティップが接着されているものだが、タイトリストマーケティング部の副社長のクリス・マギンリーによればGATシャフトは「先端から10インチの部分に鉄のフィラメントが使われているグラファイト、これまでにない安定性、および感触を与える」ものである。

GATは、コンスタントウエイトで、テイパーティップのアイアン用。重さは95gと115gの二種類ある。

「望んでいた弾道が得られた」とマギンリーは言う。「高弾道になるようデザインされていおり、ショートアイアンではコントロール性が高い(しかし、弾道は高くなりすぎない)。ロングアイアンではボールをより簡単に上げられるようになっている」

グラファイトデザイン社の営業・ツアープロ担当の副社長ダン・ブラウン曰く、「GATシャフトにおいては耐久性を最大限に追及した。このすばらしい製品には、多くのプロ選手からも興味をよせてもらっている」

エミリィー・クラインは、LPGAにおいてキャラウェイアイアンにGATシャフトを使用していた。消費者は、タイトリストのアイアンでしかGATシャフトが手に入らない。グラファイトデザインは名前と特許の所有権を保持しているが、タイトリストは独占売買取引契約書を結んでいる。現在は、GATシャフトはタイトリストのカスタム・フィッティングによって手に入る。今年の後半に新しいアイアンを同社が紹介するときには、GATシャフトはスタンダードなものになるであろう。

シャフトメーカーのみならず、日本の進出例はまだある。キャスコは、VSツアードライバーとK2Kユーティリティ・ウッドを有する革新的なメーカーの一つである。日本のロイヤルコレクションのアメリカ法人であるソナーテックは、きわめて優秀なフェアウェイウッドで有名である。

先の全英オープンで、最終日、最終組のデビッド・デュバルベルンハルト・ランガーは、両者とも依頼されたわけでもなくソナーテックのフェアウェイウッドを使っていた。

こうした日本のメーカー同士が固く結束できるものがあるとすれば、それは彼らの哲学である。テクノロジーを訴え、高品質であることこそアメリカのゴルファーを魅了させると考えているのである。(GW)