親子の思いが作り上げた夢舞台 「柏オープン」開催までのキセキ
◇柏オープンゴルフ選手権(2日)◇藤ヶ谷カントリークラブ(千葉)◇6884yd(パー72)
柏市在住のゴルフキャスター・薬師寺広さんと息子の輝(ひかる)さんが発起人となって行われた第1回「柏オープン」は、市内の練習場で腕を磨く地元選手の優勝で幕を下ろした。大会はYouTubeで生中継が行われ、実況席には薬師寺広アナウンサーと佐藤信人プロ、お隣・我孫子市出身の大西翔太コーチという豪華な顔ぶれが並んだ。準備段階で様々なミラクルも重なった“超”ローカルオープン実現までの軌跡をたどった。
きっかけは4年前。2016年にスタートした「柏ゴルフフェスタ」期間中に、市内にあるゴルフ関連施設が「ゴルフで地域を活性化したい」という地元への強い思いで結びつき、チャリティ大会を開催した。だが、初年度から4年が経った2020年。例年8月に実施していたチャリティ大会は、新型コロナウイルスの流行によって中止が検討されていた。
ここから「柏オープン」実現まで、3つの奇跡が重なっていく。まず、それまでゴルフ業界で忙しい毎日を送っていた父子は、コロナ禍で仕事が減少。理想としていたオープン競技会について、6月頃からふたりで話し合う時間が生まれた。「今年やらずにいつやるんだ!」という気持ちが芽生え、企画から予算組み、予選会を含めた会場確保まで約5カ月という短期間でまとめ上げた。息子の輝さんは「協力してくださる方と信頼関係を築いてきた父のキャリアを絶対に潰さないと心に決めて、一切の妥協を許さずやった」と信念を口にした。
2つ目は日程だ。試合中止が相次ぎ、感染状況も刻々と変わりゆく中で企画を進め、夏に11月開催を決定した。結果的に前後の試合やQTと重ならず、レギュラーツアーで活躍する選手たちも出場し、大会に活気を添えた。
3つ目の奇跡は、「日本オープン」チャンピオンの出場だ。6月に稲森佑貴とプライベートラウンドをした際に、親子は「柏オープン」構想を伝えたという。日程やコースが決まって再び声を掛け、快諾してくれたのが9月のこと。その後、10月の「日本オープン」優勝のニュースが飛び込み、小さなローカルオープンに日本一のゴルファーが参戦するという嬉しい驚きに発展した。
父・広さんは、ローカルオープン開催の意義について「普段、華やかな表舞台に出られない人たちが実際にはゴルフを支えている。そのような人たちに光が差し込むような夢舞台を作ってあげたい」と目を輝かせる。「ゴルフは誰でも楽しめるスポーツです。オープンにすることでプロ・アマ問わず、性別や年齢に関係なく挑戦する気持ちと技量があれば戦える。世代をこえて市民が集うきっかけを作りたい」とゴルフを通じた地域貢献への可能性に言及した。
規模は小さくとも、1つの大会を作り上げる苦労がふたりの言葉からにじみ出ていた。次回大会について、薬師寺親子は「100年続く大会にすると掲げているので、まず来年2日間開催にしたい」と口をそろえる。春に新芽をつけるまで葉を落とさずにいることから、「愛は永遠に」という花言葉をもつカシワの木のように、世代を超えて続く夢舞台であって欲しい。(千葉県柏市/大久保彩)
柏オープンゴルフ選手権 公式サイト:https://www.kashiwaopen.com/