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クイッケンローンズ・ナショナル
期間:06/23~06/26  場所: コングレッショナルCC(ブルーコース)(メリーランド州)

<選手名鑑204>ウィリアム・マクガート

ウィリアム・マクガートは朗らかで気さくな人柄から「ウィリー」の愛称で親しまれている

■ 帝王から戴冠 メモリアルでメモラブルな初優勝

ウィリアム・マクガート(37)は173cm、88kg。カーリーヘアで少々ぽっちゃり体型、アニメキャラにもなれそうな雰囲気だ。朗らかで気さくな人柄から「ウィリー」の愛称で誰からも親しまれているが、世界の精鋭が集うPGAツアーでは“いい人”だけでは結果は出せず、奮闘を続けるも164試合が過ぎていた。

いつものように精一杯頑張ろうと思いつつも、大きな期待をせずに出場した165試合目。2年前に松山英樹がツアー初優勝を飾った大会でもあり、2016年6月第1週に開催されたジャック・ニクラス主催のザ・メモリアルトーナメントで遂に夢を叶えた。難コースを粘り強くプレーし、ジョン・カラン(29)とのプレーオフを制した。ニクラスからトロフィを授与され感無量。同試合は強フィールドで、優勝者には通常より1年長い3年のシード権のほかに、マスターズやビッグトーナメントへの出場権が与えられる。世界ランクも一気に58スポット上昇し、キャリア初のトップ50入りを果たした。

1979年6月21日、ノースカロライナ州南部にある製材業が盛んなランバートンで生まれた。サウスカロライナ州にあるリベラルアーツカレッジのウォフォード大学を01年に卒業、3年後の04年にプロ転向した。いくつものミニツアーを渡り歩くラビット生活を経て、Wウェブドットコムツアーに参戦。7年後の2011年に目標のPGAツアーへ昇格した。参戦から5年目での悲願の初優勝。毎年シード権キープを目標にしていたが、一気にいくつものボーナスを同時に得て「こんな日が来るとは夢にも思わなかった」と喜びをかみしめた。

■ 「馬鹿じゃないの!?」タイガー・ウッズが一喝

初優勝へと導いたのはタイガー・ウッズ(40)の言葉だった。ツアー2年目の7月、マクガートはカナディアンオープンで2位と大健闘し、自己ベストフィニッシュを飾った。優勝したスコット・ピアシーに1打差の惜しい試合でもあった。

翌8月、地元ノースカロライナ州キアワアイランドで開催の全米プロ選手権の練習グリーンでのことだった。パットの練習をしていると、ウッズが練習にやってきた。マクガートのキャディ、ブランドン・アンタスと、ウッズのキャディ、ジョー・ラカバは親しく、和気藹々とした会話にマクガートも加わった。ラカバが「カナディアンオープンは惜しかったね」と労うと、「ありがとう。でも後悔がひとつある。バック9で一度もスコアボードを見なかったんだけど、それが正しかったのかなぁ」とマクガートは答えた。その言葉を耳にしたウッズは、「今、何て言った!」と詰め寄った。動揺したマクガートは「優勝争いは初めてだったので…。リーダーボードを見たらプレッシャーで自分のプレーを貫けない気がして…」と説明。するとウッズは”You are an idiot”(馬鹿じゃないの)と痛烈な言葉を浴びせたのだ。「自分が現在どんな立場なのかを確認しなければ、どんなプレーが必要かわからない。(NBAの)コービー・ブライアントが最後の場面でスコアを見ないと思うかい?冷静に見極めてプレーしないと優勝はないんだ」と一喝したのだ。

厳しい言葉だったが、時間の経過とともに「重大な助言」とジワジワ身に染みていった。以降、スコアを確認し、考えながらのプレーを心がけ「上位入賞が増えた」のは事実。喝を入れられた翌13年のカナディアンオープンで再び2位に入ると、今季のサンダーソンファームズ選手権でも1打差2位。優勝へ着々と近づき、遂にチャンピオンの称号を手にした。今週の試合は恩人ウッズが主催する大会、成長の証を彼の目前で示さねばならない。

■ 糟糠(そうこう)の妻-苦しい時期を支え続けたサラ夫人

マクガートは少年時代からスポーツに優れた選手だった。大学入学の際には、野球でも才能を開花させ、捕手として活躍した。その名残りか、今もグリーン上でラインを読むためにしゃがむ姿は、まるで捕球準備をしているような雰囲気がある。

サラ夫人とは大学時代に知り合った。マクガートが活躍していた4年生の時に、彼女が新入生として同じ学生寮に入寮。ほどなくして友人に紹介され、デートするようになった。3年半の交際を経て、彼女の卒業後すぐの04年5月に結婚した。マクガートは挙式前週にプロ転向して新生活をスタートさせたが、新婚早々から大変な状況は続いた。収入はほとんどなく、転戦費用ばかり嵩んで家計は火の車だった。サウスカロライナ州のアディダス社オフィスに勤務しはじめた夫人の収入で、何とか遣り繰りする日々を送っていたという。ミニツアー転戦のため、飛行機代を節約するために2万3千キロ走った中古車を購入し、その車で走行距離32万キロまで走って乗りつぶした。時には宿泊費を節約するために車中泊も余儀なくされた。

夫人はマクガートの夢を叶えたい一心で叱咤激励し、懸命にサポートを続けた。マクガートは7年後にPGAツアーに参戦し、その2年後に長男、そして長女が誕生して4人家族となった。初優勝の際、誇らしく夫を見守るサラ夫人の姿があった。2勝目、3勝目へ向け、これからがマクガートの本格的スタートとなる。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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