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<嗚呼、チーム芹澤の美しき師弟愛>

いま最も強い43歳の顔が思わずほころんだ。「え、本当ですか?!」。藤田寛之である。筆者との他愛ない会話の最中のことであった。
先週の練習日でのことである。
「いま、藤田さんが一瞬、芹澤さんに見えました」と、言った際の反応であった。

似たもの夫婦ということわざもあるように、一緒に暮らしていると、性格や好みまで似てくるとはよく言われることだがそれは、師匠と弟子の関係も同じかもしれない。

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いや、むしろ弟子は師匠に出来るだけ近づこうと努力するわけだから、夫婦どころかそれ以上に似てくるのは当然のことかも。実際に、そのとき練習グリーンで黙々と練習していた藤田のちょっとしたしぐさや体の使い方なんかが、なんとも芹澤信雄の風情を醸し出していたのである。

「いや、それなら嬉しいですね」と、藤田は言った。
「僕も芹澤さんみたいにあんなに足が長いということですね?」と、冗談で返されたときには、こちらはただ曖昧な笑顔を浮かべているしかなかったが(藤田さん、スミマセン!)、素直に喜ぶ藤田の様子に「ああ、この人は本当に師匠のことが大好きなんだな」と、微笑ましかった。

芹澤との出会いは、藤田のデビューから2年目の1995年。熊本で行われていたトーナメントで藤田が思いきって、「一緒に練習ラウンドさせて下さい」と、願い出たことにさかのぼる。藤田はかねてより、同じ九州出身の吉村金八プロに「強くなりたければ、強い選手と行動を共にしなければいけない」と言われていた。
その言葉が頭のどこかにこびりついていたという藤田は、ひそかにプレースタイルをお手本にしていた芹澤の門を叩いたわけである。

コチコチに緊張しながら申し出た藤田に芹澤はあっさりと言ったそうだ。「ああ、いいよ。じゃあ今日一緒に回ろう」。「え・・・、い、いきなり今日ですか?!」と、急展開に慌てふためいたあの日から早17年。ずっとその背中を追い続けてきた。
「芹澤さんがいなければ、今の藤田寛之はありません」と、言い切るほどに、今も強い絆でがっちりとつながっている。

出会ったころから、芹澤は変わらない。それがますます藤田の思慕の念を高める。「有名になると、勘違いする人も多いでしょう? でも芹澤さんは絶対にそれがない」。
たとえばホテルの駐車場で、スタッフが気を利かせて「特別に玄関前に駐めてくださってけっこうです」と言ったとする。「それでも芹澤さんは、必ず指定の位置に駐めに行く。特権が許される立場になってもそれに甘んじるということがない」。
裏表のない性格も、藤田が信頼を置く一番の理由だ。
また50歳を超えてもあの爽やかさ。年齢の割にスラリとした体型も、日頃のトレーニングのたまものという。
「いや、本当に素晴らしい方です。憧れなんです。そんな人に似てるなんて言われたら、そりゃあやっぱり嬉しいでしょう」と、まるで初恋の人を語るように言う藤田を、芹澤がとがめた。

「おいおい、俺に似てるなんて言われて喜んでるようじゃダメだよ。40歳も超えたらお前もそろそろ自分の色を出していかないといけない」と、師匠にダメ出しされてもお構いなし。
「芹澤さんに似ている部分も、僕の個性ですから」。
つくづくと、美しき師弟愛である。

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