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苦悩の伊澤利光 心を揺さぶる唯一の存在は

渾身の思いを込めて放ったティショットは、左サイドの木々の中へ消えた。北海道の札幌ゴルフ倶楽部 輪厚コースで開催中の国内男子ツアー「ANAオープンゴルフトーナメント」2日目。連日の「68」をマークして通算8アンダーにスコアを伸ばしてきた伊澤利光。しかしこの最終18番の一打で、名手の心はまた折れてしまった。

「満足度?まったく(無い)です」。ホールアウト後の表情は、トップに2打差の3位タイで決勝ラウンドに進んだ選手のそれではない。この日はインから出ると11番(パー3)で5番ウッドでの第1打をピンそば1メートルにつけてバーディを先行。さらにその後4バーディを重ね、ボギーは8番(パー3)だけ。しかしそれ以上に、「どれだけ明日から(決勝ラウンドで)やれるかと思って気持ちを入れたので、ガッカリ」と最終ホールの第1打が気に入らない。「この程度のゴルフでは、優勝争いが出来ると思わない。今までの経験から言えば、この状態で勝ったことは一度も無い」。そして「(今大会の)僕の優勝は無いです」と言い切った。

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2007年の「日本プロゴルフ選手権大会」で通算16勝目をマーク。しかし当時から抱いていたショットへの悩みは「今も変わらない」という。肉体面では「年齢のこともあるから痛みが出ることもあるけど、打てないほどではない」。その一方で「心が折れる。やっても、やってもダメかと思うと気持ちが続かなくなってきた」。昨年の予選通過はわずか1試合。10月以降はシーズン終了まで欠場してしまった。

「あまりにヒマだから」。“休養中”のトレーニングいえば、たまのジム通いくらい。これといった趣味が無く、ある日、思い立って料理を始めた。「キャベツの千切りとか・・・ハンバーグ、餃子、揚げ物なんか全部やった。3時間も、4時間も時間はあったから」。しかし厨房で過ごす時間は、心の傷を癒すまでには至らなかった。

前述の国内メジャー制覇で獲得した5年間のシード権は今季が最終年。しかしそのシーズンを前に、長年、名コンビを組んできた前村直昭キャディとの関係を“解消”した。「彼の生活ももちろんあるから。成績を出せないし、迷惑をかけられない。申し訳ないけれど、距離を置いてみようと話した」。ツアールーキーの藤本佳則に相棒を譲った格好になった。

そしてこの12年も、今大会がまだ3試合目の予選通過だ。モチベーションを上げる材料といえば「やれることだけはやっておこうかな、という気持ち。誰のためではなく、自分への期待だけで頑張っている」と話す顔は悲壮感も見て取れる。

ただ、ひとつだけ心を揺さぶられる存在がいる。「強いて言えば、マルちゃんくらい」と、1歳年下、同世代の丸山茂樹の名前を挙げた。2002年の「ワールドカップ」で日本に優勝をもたらした仲だ。コースで会っても、実のありそうな多くの会話は無い。ただ「目だけ合わせて、握手して、『じゃあね』って。無言で励ましあっている感じ」。

「あそこ(丸山)には負けない、なんて低いレベルだけど」と伊澤は笑った。一時代を築いた2人が、お互いの健闘を心の底から称え合う。そんな握手が再び交わされる日を、ゴルフファンは待っている。(北海道北広島市/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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2012年 ANAオープンゴルフトーナメント



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