【WORLD】“解読不能”B.ワトソン/マスターズプレビュー
Golf World(2013年4月8日号)texted by E.Michael Johnson
誰も彼が一般的でないことを責めているわけではない。好きなゴルファーを聞けば、迷わずジョッシュ・ブロードウェイと答える。ほとんど周囲には知られていないウェブドットコムツアーのプレーヤーだ。「彼のクロスハンドスイングは良いよ」と答えてくれた。
そんな答えも、昨年のマスターズプレーオフ(10番)で残り153ヤードの位置から52度のウェッジで40ヤードのフックショットを決めてみせ、ルイ・ウーストハイゼンに勝利したことと比べれば大した話ではない。だが、圧倒的なパワーと想像力を持つバッバにとっては当たり前のショット。たとえ勝利のかかった重大な局面でも恐れずに試す。その他の試合では残念ながら上手くいかなかったことでも、メジャータイトルのかかった大舞台で成功。結果的に1年間話題となり、ピンクのドライバーと同様にバッバが他者と違うことを表す代名詞となった。
マスターズを制したことでワトソンは特別な存在となったのかもしれない。タイガー・ウッズが本来の姿を取り戻していなかったことも影響し、全てがワトソンの流れに傾いた。自己流のスイング、骨ばった肩、そしてツイッターでのジョークなど、ウッズとは異なりワトソンは近づきやすい存在でもある。
だが、昨年のマスターズ以降、ワトソンは未勝利に終わっている。
現段階では判断が早過ぎるかもしれないが、マスターズ優勝が“安易な願いに注意せよ”という警鐘となる可能性だってある。優勝後、テレビ番組に引っ張りだことなったワトソンは、最初のうちはどこへだって喜んで馳せ参じていたものの、セレブの苦しみ、つまり好きなところに好きな時に行くことの難しさを味わい始めた。
他の選手とは一線を画すワトソンは、マスターズから数週間後の「プレーヤーズ選手権」を欠場。養子として迎えたばかりのカレブ君との時間を優先する為だったが、都合の良い理由をつけてプレーをしたくないのだろうという意見も聞かれた。その一方で、ゴルフボーイズメンバーでもあり、広い心を持つワトソンがチャリティ活動に勤しんでいると過度に誇張されたこともあった。昨年7月、クラブ契約をしているピンを表敬訪問した時のこと。ワトソンは2200を超える用具に黒のマジック(その時あった筆記用具がマジックだけ。それよりも気難しい彼がサインをするとは!?)でサインを書いていた際、「ここまで有名になりたいなんて思っていなかったのに」と漏らしていた。マスターズ優勝会見の時に話したコメントが予兆となり、歯車が狂い始めたのだろう。