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【WORLD】 L.トンプソン 天才少女の素顔〈2〉

Golf World(2012年1月30日号)

オレンジカウンティ・コンベンションセンターでのトンプソン旋風は、翌日の朝も続いた。ビル・コートヘイスも、トンプソンの大ファンを自認している1人だ。「彼女こそLPGAツアーの未来を背負う人物。それもこれも、彼女の姿勢に他ならない。何があっても動じないし、実年齢よりも大分落ち着いている」。

そして1人のプレーヤーとしての落ち着きも、昨年夏にLPGAコミッショナーのマイケル・ワンがトンプソンにQスクール出場資格を与えた要因だった。2012年からフル参戦という特例資格を承認させたのは、昨年9月の「ナビスタークラシック」でトンプソンが2位に5打差で優勝したため。ソルハイムカップ直前の大会、しかもロレックスランキングのトップ20位中16人が参加した試合という条件下での優勝は快挙と言っても良かった。

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「何が一番難しかったというと、コミッショナー云々ではなくて、彼女の父親からの許可だった。我々は世界中を回ることが多いし、プロアマのパーティーにはアルコールが入った飲み物も用意してある。中には50代の人とプレーすることもあるわけだから、20代の選手には常に気にかけている。16歳の選手だけではなくてね」。

ワンは、2006年に当時16歳でツアーメンバーではなかったミッシェル・ウィに対し、LPGAがマーケティングの面で必要以上の注目を集めさせたという大きな過ちは繰り返さないと明言している。しかしながら、これから現れるであろう若手選手の台頭に期待している。ウィも22歳に成長し、ヤニ・ツェン(23)、チェ・ナヨン(24)、ポーラ・クリーマー(25)と期待の選手が揃っている。

ワンは「レクシー、彼女の父親、それにボビーにも伝えたが、彼女を見ているとヤニを思い出させる。スタッツでも抜きん出ていたが、何よりもラウンド毎に笑顔を振りまいていた。レキシーからも同じように笑顔が見られるからね」と、この才女について語った。

笑顔がチャームポイントであるマローンもまた、昨年の冬に彼女がパインツリーGCで主催したプロアマでレキシーと交流を持つ機会があった。毎時20マイルもの強風が吹く中、それまで一度もコースを見たことのなかったレキシーは「67」を記録し、兄ニコラスに勝利。それを見た、大学でプレーするパインツリーのジュニアメンバーは、彼女をダンスパーティーに誘うのではなく、もう1度一緒にプレーしてもらいたいと招待したという。

「パットの瞬間を見れば16歳の少女ということがわかるわ」とマローン。何にも恐れることなくパットを打つ様を形容した。「子供がグリーン上で遊んでいるように見えるの。でも、非常に洗練されたプレーヤーとしてね。忘れて欲しくないけれど、女性の方が肉体的には男性よりも早く成熟するけれど、精神的にはティーンエイジの女の子は自己を抑制するのが難しくなるの。ホルモンを抑えるのは本当に難しいことだから」。

ホルモンバランスがアドレナリンの生み出すのか、トンプソンは午前11時のコブラプーマのブースでのセッションの前に到着。ちょうどその時分、NBA、オーランド・マジックDJのスコッティもターンテーブルを回していた。展示品の中でも特に注目されたのは20フィートもの巨大なトンプソンとリッキー・ファウラーの壁画だ。

PGAツアー「プエルトリコオープン」のチェアマンを務めるシドニー・ウルフは、クロースラーにレキシー、そして彼女の兄ニコラスに大会出場枠を与えるとオファーしたが、クロースラーはこの申し出を辞退。ウルフは、「過去に父親と息子、或いは兄弟が同じフィールドでプレーしたことはあったが、兄妹というのは前例が無い」と、オファー提示の理由を説明した。

CNBCスポーツのビジネスレポーターであるダレン・ロヴェルが立ち寄った際、トンプソンの何が、人と市場を惹きつけるのか聞いてみた。ロヴェルはトンプソンがアメリカ人のルーツを引き継いでいるということ、そして彼女の若さ、フレンドリーさが注目を集めるファクターになっていると答えてくれた。そして若くして優勝したという実績も後押しを強く受ける要因だという(ウィは初優勝にプロ転向後4年以上もかかった)。ちなみに、トンプソンとウィは、昨年ドバイで開催された大会での写真撮影で顔を合わせたが、交流を持つほどの時間は無かった。

ロヴェルは「彼女は本物だ」と、トンプソンが作られたスターではなく、スター街道を走れるだけの才能に恵まれていると断言している。

写真撮影の際に恥ずかしがるのは若いプロフェッショナルゴルフマネージメントの学生には頻繁に見られること。そして同じく16歳にしてAJGAゴルファーのステファニー・ボスドシュもトンプソンにアドバイスを求めた。それに加えてフィンランドからもテレビクルーが取材を申し込み、ニューヨークのバッファローからもラジオ関係者がインタビューの順番を待っている。トンプソンは年齢に関わらず、全員にきちんと時間を割いてくれる。今年の1月にモーガン・プレッセルの資金集めパーティーでトンプソンと会ったという2人のクラブプロは、レキシー本人の直筆ノートを見せびらかし、お祭り騒ぎとなっていた。「私は自分を隠さないの。全部をさらけ出しているわ」とトンプソン。

ではLPGAツアーに出場している他の選手達の反応はどうだろうか?皆トンプソンの活躍に嫉妬しているのだろうか?

ナタリー・ガルビスは、テーラーメイドのブースでサインをしながら、「彼女は本当に性格の良い子よ。ツアーに出場する選手も皆好きになると思うわ。私達にとっても重要な存在だし、ファンもきっと喜ぶはず。本当に可愛くて、キュートよ。ウェアの着こなしもクールだし、人柄も良い。これ以上求めるものは何も無いわ」と、トンプソンの参戦を歓迎している。

オーランドで開催された3日間のイベントのハイライトは、何と言っても著名人が参加したファッションショー。メインステージで行われたショーの最中、トンプソンはランウェイをどう歩こうかと考えていたという。レキシーにとって人の前に立つことは難しいことではないものの、ファッションモデルさながらのターンを決めるかどうかについてだけが心配の種だった。

バックステージではメジャーリーガーのジョニー・デーモン、ビッグブレークに出演しているブレア・オニール、そして2009年のマクドナルドLPGA選手権で優勝したアンナ・ノードクヴィストらと交流。もし、トンプソンに己を抑制出来ない瞬間があったとすれば、この時がそうだったのではないだろうか。「空に飛んでいきそうなくらい嬉しかったの」。

会場は満席だったが、トンプソンの表情からは恐怖に満ちた様子は一切感じられなかった。10代の少女に向けられる視線を全く気にすることなく笑顔で現れると、音楽に合わせて頭を振り、ランウェイの最後まで堂々と歩き、らせん階段まで進むと、スムーズに振り向きウィンクで観客を魅了。そして親指を立てるポーズを取った。

米国ゴルフダイジェスト社提携
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