「ゴルフに重要な“間”は、ときに悪魔の“魔”になる」
「週刊ゴルフダイジェスト」(2月26日号)より
ことゴルフに限るなら、時間とはリズムやタイミングのこと。空間とは、三次元にクラブが動くスウィングプレーンのこと。人間とはフィジカルのみならず、メンタルも含めての人。そして仲間とは一緒にラウンドする者たちであったりキャディであったり、ライバルであったり。
それら全部を含めて、棚網良平プロは“間”と呼んだ。そして、そのゴルフにも重要な間は、「ときに悪魔の魔にもなる」というのが口癖だった。
週刊GDの特集では、スウィングの「切り返し」と「間」についての研究を行った。その中から、昨年、惜しまれつつ逝去した棚網プロの、先の言葉の意味を検証している。
中学1年から高校3年までの6年間指導を受けた江連忠プロは、少しでも切り返しのタイミングが速いと、「そういうのを間抜けというんだ」と叱責され、アドレスのポジションが悪いと「その構えを間違いというんだ」と注意を受けた。そして「約束の時間を守るという意味だけでなく、間に合うということがいかに大事か。それはゴルフでも人生でも同じだ」と、諭されたともいう。
たとえば、そんな“間”を重要視した棚網の教えに「距離に立て」というものがある。曰く、多くのゴルファーはボールに対して構えるが、間に合うアドレスとはターゲットに対して構えること、だと。特にパッティングの構えについては「ボールではなくホールに構えろ」と言った。10メートルのパッティングと3メートルのアドレスは厳密には違い、それが「間に合う」ことだ、というわけだ。
「カップの先を見ないから届かない。その先には次のホールも、明日もある」
とも言った。ボールに構えてもダメ、カップにこだわってもダメ。それでは、すでに始まっている勝負は“間に合わない”ということだろう。
●棚網良平(たなあみ・りょうへい)
戦前は東京GC、戦後は相模CCと名門コース所属プロとして活躍。60年、大逆転での日本プロ優勝は語り草である。数多くのプロを育てる江連忠の師匠。昨年91歳にて逝去した。