夢のクラブ? “元ナイキ”の職人が立ちあげた新ブランドとは
ナイキゴルフがクラブ、ボール、キャディバッグの製造事業から撤退したのが2016年8月。それから半年後の17年2月、かつて同社でクラフトマンとして働いていたマイク・テーラーとジョン・ハートフォードのふたりは、ナイキのテストセンター兼工房だった通称”オーブン”の施設をほぼそのまま引き継ぎ、新会社を設立した。
その名は「アーティザンゴルフ(ARTISAN GOLF)」。今年4月の「マスターズ」でパトリック・リードが優勝した際に使っていたウェッジを作った。それが世界に伝わってからというもの、テーラー氏の携帯電話はひっきりなしに鳴ったという。
テーラー氏は87年、地元のテキサス州フォートワースにあったベン・ホーガン社にエンジニアとして入社した。その後、いくつかのメーカーを経て、2003年にナイキのクラフトマンに加わった。用具製造事業からの撤退を知らされた際には「何をしていいかわからなくなった」とショックは大きかったが、引き続き同社製のクラブを使う選手のサポートを続けながら、ハートフォード氏と新ブランドを立ち上げた。
ナイキ時代にはタイガー・ウッズのアイアンを削ったテーラー氏。ウッズが現在使用する新しいアイアンを作る際にも、契約メーカー(テーラーメイド)のアドバイザーとして参加している。
アーティザンゴルフは従業員が6名という少数精鋭の職人集団。販売専門スタッフも不在で、現在は多くの注文に応えられる体制が整っていない。ホームページには電話番号もなく、問い合わせ専用のメールアドレスがあるだけだ。それでもテーラー氏は「休みがないほど注文が多い」と、毎日のようにウェッジを削る。
現在はウェッジ(250ドルから)とパター(875ドルから)のみの製造を行っているが、来年にはアイアンのフルセットを完成させる予定だという。ただし、今から注文しても発送時期は分からないという状態は変わらず、いつかは手にしてみたい夢のクラブとなっている。