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松山英樹の使用ドライバー遍歴 4年ぶりにスリクソン回帰の理由

PGAツアーで戦う松山英樹は2016年の秋から、頻繁に1Wをスイッチしてきた。アマチュア時代から慣れ親しんだ住友ゴム工業(ダンロップ)のスリクソン ZR-30を使い、同年「日本オープン」までに日本で7勝、米ツアーで2勝(通算成績は日本8勝、米5勝)。その後はキャロウェイ、テーラーメイド、ピンといった米国メーカーのヘッドを渡り歩き、この20年秋に4年ぶりにダンロップの新製品スリクソン ZX5ZX7を使用した。

実際には「ZX7」は9月「ツアー選手権」の第3ラウンドだけで握られ、いま最も信頼を寄せているのは「ZX5」といえそうだ。松山はこの“エースクラブ”について「構えたときの顔が良い。見た目はメチャクチャ大事」とうなずく。近年、せわしなくも、真剣に取り組んできた使用1Wの変遷を振り返った。

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「ZR-30」で世界へ 「GBB」で頂点へ

2008年に住友ゴム工業が発売したスリクソンZR-30を使い、松山は11年に「マスターズ」でローアマチュアを獲得、同年国内ツアー「三井住友VISA太平洋マスターズ」で優勝した。13年のプロ初年度に4勝して賞金王に輝き、翌年PGAツアー「ザ・メモリアルトーナメント」で初勝利を挙げた。

凱旋優勝した16年「日本オープン」まで、ヘッド体積がひと回り小さい(425㏄)この1Wが唯一無二の相棒だった。キャロウェイ グレートビッグバーサ(以下GBB)を実戦投入したのはその翌週のこと。PGAツアーの新シーズン自身初戦で握り、翌週の「WGC HSBCチャンピオンズ」で2位に7打差をつけて圧勝。秋から冬にかけての無双状態を経て、翌17年に「WGCブリヂストン招待」で米国5勝目をマーク。世界ランクは2位まで上り詰めた。

目まぐるしいスイッチ 数メーカーをサーフィン

バックヤードでの新製品テストにオープンマインドな松山が、実戦でも数多くのモデルを握るようになったのは2018年。前年の「全米プロ」で涙の敗戦、18年4月「マスターズ」を19位で終えてから、5月「ウェルズファーゴ選手権」でテーラーメイド M3 440を使用。この年、5機種を大会で手にした。背景には、GBBが経年劣化で破損するリスクを懸念していこともあった。

実際に6月「全米オープン」の会場で、戻したはずのGBBのヘッドにヒビが入り、急きょピン G400 LSTを使うアクシデントも。M3 440は「全英オープン」などで大型ヘッドのテーラーメイド M3 460にチェンジ。夏場には英国に遠征した際に他選手が使っていた日本未発売モデル、キャロウェイXRスピード(XR16の海外版)に一目惚れして、日米で1試合ずつ使用した。

19年には新年にキャロウェイのエピック フラッシュ サブゼロを投入。3月の「アーノルド・パーマー招待」からテーラーメイド M5に替えた。10月・韓国での「CJカップ」からはディープフェースのテーラーメイド M5ツアーにマイナーチェンジした。

テストを重ねていたダンロップの新製品

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた2020年、テーラーメイド SIMMAXで新年を迎えた松山は、シーズン中断中にもダンロップのスリクソンZX5スリクソン ZX7をテストしていた。

数値的には納得いくものが完成しており、今年の中盤には実戦投入する可能性もあったが、ツアー日程が著しく変わったことで、スイッチは2019―20年シーズンの終盤になった。「ZX5」での初戦、8月末「BMW選手権」で優勝争いを演じて3位。「ティショット自体がメチャクチャ悪い時期。(ZXは)飛距離も出るかもしれない期待もあった。どうせ悪いなら替えちゃえと思ったら3位からスタートした」と笑顔で言う。翌週「ツアー選手権」3日目に「ZX7」を手にしたが、10月開幕の新シーズンでも「ZX5」は変わることなく、年内最後の試合となった「マスターズ」を終えた。

松山がこだわる“見た目”

ここ数年で松山は肉体面やスイングの進化、その都度求める球筋の変化に沿うクラブを探してきた。愛着のあるダンロップのクラブを数年、手放していた理由を「自分のスイング、打ちたい球に当時のドライバーがフィットしなかった」と明かした。

初速、ヘッドスピードという数値もさることながら、松山は特にアドレス時の“見た目”を気にする。シャフトからヘッドのトップラインへのつながり、クラウンの形状とバランス。「ロフトが立っているように見えたら、動きでボールを上げるようにしてしまう。(ロフトが)寝ていたら、かぶせようとしてしまう」。計測器で表示される数値が優れているだけではダメ。弾道とスイングのイメージを邪魔しないクラブを選んできた。

海外メーカーのモデルを投入してきた一方で、ダンロップにはフィードバックを通じて、世界と渡り合える1Wの開発を求めた。厳しい選別の理由は「(PGAツアーの)レベルが上がっている。予選カットラインのスコアが高いと感じることが多い。余裕で通っていると思ったら、2、3打しかなかったり…。その中でトップの選手が、意味が分からない数字を出してくる。それについていかないといけない」と危機感も覚えるが故だ。

“世界”と戦うダンロップ

松山が自社製品を握ることが、ダンロップにとっては集大成のようでプロセスのワンポイントに過ぎない。2020年、PGAツアーにおける使用ドライバーの各メーカーの割合は、タイトリストが約26%、テーラーメイド22%、ピン21%、キャロウェイ20%。実に90.65%を米国の4メーカーが占める。ダンロップは5番目につけるが2.9%で、ミズノ、PXG、コブラなどと僅差を争うグループにいる(ダレル・サーベイ社調べ)。

ただし、この数年は日本を代表するブランドがその現状と正面で対峙(たいじ)した時間として意味を持つ。同社で現在、松山のギアを担当する宮野敏一氏は言う。「日本メーカーのウッドはパーシモンの時代から強いとは必ずしも言えませんでした。松山選手をきっかけに、世界で戦えるものを目指した開発に改めて向き合うようになった。一時的に『ダメになってしまっていた』のではなく、この数年で新しい歴史が始まったのでは? 日本の技術が、新しいチャレンジをしている物語がスタートしたところなんだと思います」

海の向こうのツアー現場で宮野氏を含めた前任から多くの担当者は日々、松山の真剣な要望に応えるべく悩み、ときに苦しんでもきた。第三者的な視点で言えば、年明け1月、初戦となるハワイでの「セントリー」でその手に「ZX」が握られている保証もない。山は高くなればなるほど安息できるエリアは狭い。ゴルファーにとっても、ものづくりに情熱を捧げる人にとっても、1ヤード先を追い求めるストーリーはずっと終わらない。(編集部・桂川洋一)

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