グラファイト、藤倉、三菱ケミカルの新作シャフトがバッチバチの戦い
◇国内メジャー◇BMW 日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ 4日(事前)◇宍戸ヒルズCC西コース(茨城)◇7430yd(パー71)
梅雨入り前のこの時期、ツアーでお決まりの風物詩がある。大手シャフトメーカーの次期モデルのツアーシーディング(選手によるテスト)が始まるのだ。国内メジャー週に合わせ、グラファイトデザイン、藤倉コンポジット、三菱ケミカルと各社がこの秋発売の新作モデルを男子ツアーでお披露目した。
各社ツアー担当者はかん口令を敷かれているようで、詳しく聞こうにもその正式名称すら教えてもらえない。ラベルから推測するに、グラファイトデザインは「ツアーAD GC」、三菱ケミカルは「ディアマナ BB」。“SPEEDER”の表記のみのフジクラに関しては、その紫色のコスメから類推すると「スピーダーNXバイオレット」(もしくは「NXパープル」)だろうか。
グラファイトの「GC」は、手元がカッパー調でそこから先が落ち着いた白色。前作の「VF」が手元調子系だったので、今回は先調子系と推測する。すでに松山英樹が5月の海外メジャー「全米プロゴルフ選手権」で試打をして好感触だったのは既報の通り。
さらに中島啓太が前週「ヨーロピアンオープン」からいきなり投入し、優勝争いを演じるなど上々の滑り出しだ。国内ツアーでもその流れは続いた。
1インチチップカットした「6S」を試した石川遼は、しばらくその新しいシャフトで球を打ったのち、「これ、今週使っていいんですか」とグラファイトの担当者に聞くほどの好感触。国内メジャーかつ、次週に「全米オープン」(ノースカロライナ州・パインハーストリゾート&CC パインハースト No.2)を控える中で新シャフトを投入まで考えるのは、よっぽど性能がいいのだろうか。
「ドローが増えるというとシンプルな表現ですが、手応えとしてはもっとポジティブな要素を凄く感じています。自分のローテーションしていく感じと、シャフトのしなり戻りのタイミングが合っている。特にこの辺の切り返しからインパクト直後ぐらいの一番遠心力が強くなるところが、手のひらから離れない感じでずっと収まってくれる」とスイングとの相性の良さを話す。
石川はそのまま「GC」を練習ラウンドへ。9ホールコースで打って帰ってきてからも、「今週これでいきそうです」と好感触は継続。スプーンのシャフトも合わせてリクエストしていたので、今週投入の確度はだいぶ高そうだ。その「GC」に関しては石川以外にも谷原秀人、大槻智春、小鯛竜也らがテストしていた。
続いてフジクラの「スピーダーNXバイオレット」。これまでの「NXシリーズ」とはコスメが変わったことから、新シリーズではないかと推測する。今までのシリーズは「ブルー→グリーン→ブラック」の順で登場していたので、順番でいうとブルーの後継だろうか。そうなると中調子系にあたる。
その「スピーダーNXバイオレット」は「ミズノオープン」で優勝したばかりの木下稜介が、早速食指を伸ばしていた。4年ほど使用中のエース「スピーダーNXグリーン プロトタイプ」と比べ、「先端があまり動かない感じで左に行かない感じがあります。今はスピン量が2700回転あるのでそれを2500回転ぐらいに収まってくれて、ちょうどいい」と、ファーストインプレッションは上々。
「距離はあまり変わらないですが、スピン量が落ちたので、打ち出しをもう少し上げれば飛びそう」と、現状9度のロフトのヘッドを9.5度か10度にして再び試打する予定だ。こちらも池村寛世、稲森佑貴、長野泰雅らがこの日試していて、中でも長野泰雅は試合での投入を示唆していた。
3社の中でもいち早く「ミズノオープン」から展開を始めていたのが、三菱ケミカルの「ディアマナ BB」。そのロゴ部分の青いカラーリングから“青マナ”の後継と見えるが、こちらは中調子系と推測できる。
試打をしていた蝉川泰果に話を聞くと、「シャフトが動いてくれる一方で、粘ってくれる部分もある。左のミスの幅が想定より狭いのがうれしいです。なのでしっかり振っていきやすい」と曲がり幅の収まりを強調。「スピン量も増えにくいので、吹けなくていいですね」とテストした感触は良さそう。この日試したのは「63TX」。さらに重量のある「73TX」のチップカットバージョンも試して、試合に向けて投入するか悩むとのこと。他には杉原大河、片岡尚之らが試打していた。
この三つ巴の覇権争い。いったいどこに軍配が上がるのか。しばらくその推移を見守っていきたい。(茨城県笠間市/服部謙二郎)