2016年 ツアー選手権byコカ・コーラ

<選手名鑑214>ジミー・ウォーカー(後編)

2016/09/21 07:30
全米プロ優勝後のNYメディアツアーの一幕、エリン夫人とJ.ウォーカー(Alex Goodlett/Getty Images)

■ ダーク・スカイウォーカー 専門家並みの天体観測

ジミー・ウォーカー(37)の趣味は天体写真。そのスケールや迫力は趣味の域を超え、NASAに選ばれた優秀作もあるほどだ。彼のホームページ(www.darkskywalker.com)にはnebulas(星雲)、galaxies(銀河)に分け、多くの作品が紹介されている。眺めているとあまりにも美しく壮大で時間を忘れてしまう。こんな世界に思いを馳せ、プレーしているのかと、思わずゴルフ場での彼のイメージの世界も見てみたくなる。

ウォーカーが撮影している望遠鏡はセレストロンRASAという高性能なものだという。焦点距離620mm、望遠鏡開口部にデジタルカメラが設置された写真撮影専用の天体望遠鏡だ。F値(レンズの焦点距離を有効口径で割った値であり、レンズの明るさを示す指標)が明るく、短時間露光で天体を映し出せ、彗星のように淡くて短時間露光が必要な天体に適した光学系望遠鏡だそうだ。

「宇宙は子供の頃からの憧れ」で09年頃から本格的な撮影を始めた。自宅では庭で、転戦中はモーターハウスに積んで持ち運び、2014年からはニューメキシコの施設に望遠鏡を預け遠隔撮影を続けている。ウォーカーは天体観測マニアの間でも知られた存在で、プロゴルファーがもうひとつの顔だと思っている人もいるとか。今までウォーカーは負傷が多く、我慢を強いられた時期が長かったが、レンズを覗けば一瞬にして心は宇宙旅行へ。最高のリフレッシュだったに違いない。

■ エリン夫人は馬術の名選手

ウォーカーは04年、ユタ州で開催のウェブドットコムツアーの試合に、ボランティアで来ていたエリンさんと知り合い、結婚。彼女もアスリートで、馬術の世界では知られた存在だ。コロラド大学でジャーナリズムを専攻し、卒業後はプロのカメラマンとして活躍。ウォーカーが天体撮影を始めた理由は夫人の影響もあった。

夫人は子供の頃から馬術を始め、大学生の頃から本格的に競技会に出場するようになった。数年前には全米25に入るトップクラスの選手で、11年にはコロラド・サマー・ホースショーで優勝を飾ったこともある。3年前、ウォーカーがツアー初優勝を飾ってからは、毎年夫婦でケンタッキーダービーに行くのが恒例になった。ウォーカーの公私はカメラマンでアスリートという夫人が、より磨きをかけているのだった。

■ エリン夫人の父はスキーの元世界チャンピオン

エリン夫人の継父マーク・スティージマイヤー(Mark Stiegemeier)はフリースタイルのスキー選手で75年の世界チャンピオン。引退後は米国最大手の電話会社AT&T社 の国際販売部門の社長などを務めた通信業界の重鎮でもある。AT&T社は毎年2月開催のペブルビーチ・プロアマの冠スポンサーを始め、多くのPGAツアーの大会をサポートしている大スポンサーだ。

ウォーカーにとってペブルビーチは義父もからむ特別な大会で、毎年モーターホームを自分で運転し家族と一緒に現地へ赴く。一昨年は雨に見舞われながらも最後までステディなプレーを続け、ダスティン・ジョンソンジム・レナーに1打差の逃げ切り優勝。長男マクレイン、次男ベケットも見守る中で凛々しい姿を見せた。

メジャーを含めツアー通算6勝。その度に家族やキャディのサンダースと喜びを分かち合うウォーカー。最強サポーターに囲まれ世界ランクは16位。2014年のメジャーでは全英オープンを除く3試合でトップ10入りの大躍進。35歳で人生が急転換し、37歳で遂にメジャーの栄冠をつかんだ。「可能性は宇宙のごとく無限」を誰より知る彼の挑戦はまだまだ続く。

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