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2016年 ジョンディアクラシック
期間:08/11〜08/14 場所:TPCディアラン(イリノイ州)

<選手名鑑209>ホン・ラーム

■ PGAツアーにランボー(Rambo)登場!

いよいよ今週、ブラジルのリオデジャネイロでゴルフが112年ぶりに五輪競技に復帰し、歴史的瞬間を迎える。北米では同週、イリノイ州でPGAツアー、「ジョンディアクラシック」が開催される。こちらは来季シード権、初優勝、久しぶりの優勝など各選手が目標に向け奮闘する。

今週の注目はスペインのホン・ラーム(Rahm=Jon/21)だ。ニックネームは名前のJon Rahmから“ランボー”。ジョン・ランボー(Rambo=John)はシルベスター・スタローン主演映画「ランボー」シリーズの主人公名!思わずそのイメージが重なる。映画のランボーはタフネスぶり、激しいバトルが魅力。ゴルフのランボーもそのスタイルはそっくり。PGAツアーに嵐を巻き起こす予感がしている。

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昨年、アリゾナ州スコッツデールで開催の「フェニックスオープン」にアマチュアとして出場した。当時は開催地近くのアリゾナ州立大学に在学中で、スポンサー推薦で参加。同試合は今季、松山英樹がツアー2勝目を飾った大会。世界最多の観客を集めるイベントで16番パー3のスタジアムホールは約2万5千人ものギャラリーが取り囲み大声援や大ブーイングが起きる。選手は地元フットボールやバスケットボールのユニフォームなどを着てギャラリーを盛り上げ楽しませる。ラームは背中にRahmboの名入りシャツを着て登場!しっかりアピールした。

■ わずかプロ2試合でシード権獲得へ猛進中

ラームは今年6月の「全米オープン」で世界アマチュアランク1位の期待通りローアマに輝いた。世界のトッププレーヤーが集結した大舞台で堂々の23位だった。その翌日、6月20日にプロに転向。プロデビュー戦は、その翌週の「クイッケンローンズ・ナショナル」だった。タイガー・ウッズが主催する招待試合で実績が評価され主催者推薦で出場。期待を超える活躍にウッズも驚いた。3日目の13番パー3ではティショットをシャンクするなど少々荒いプレーもあったが、グイグイ優勝戦線に食い込み最終的に3位とポテンシャルを見せつけた。

7月のプロ2試合目「RBCカナディアンオープン」でも優勝争い演じた。最終日は首位のブラント・スネデガーに3打差で迎え、5アンダーの「67」と猛追。通算11アンダーで優勝のジョナサン・ベガスに1打及ばず2位タイ。最終18番でイーグルパットを決めていれば優勝の可能性もあった内容だった。この2試合の活躍で、残り試合の出場資格を獲得した。トップ10に1度入れば、来季のポイントシード権をキャッチできるので目標達成。むろん、優勝すれば2年間のシード権獲得だ。今週はその意味で大切な試合になる。

■ ミケルソン兄弟の徹底サポート

ラームは1994年11月10日スペインのバリカ生まれ。バリカはスペイン北部で北側は大西洋に面し、質の良いワイン生産で有名だ。身長188センチで迫力の体躯、うっすらアゴ髭はランボーに似ている風貌。21歳とは思えない落ち着いた雰囲気だ。

高校生の時にサンフランシスコ大学から奨学生のオファーがあり、留学に備えマドリッドで英語の勉強を始めた。その最中にアリゾナ州立大学(ASU)ゴルフ部のヘッドコーチだったフィル・ミケルソンの弟ティム(7月辞職)から熱心な誘いがありASUへ進学を決意した。ティムは2014年3月米誌の取材に「フィルより凄い!」とまでラームの才能に感嘆。さらに「ジョンと兄の共通点はソフトな手首使い、卓越のパット、そして自信」とも語っている。兄フィルにとっても母校の後輩への思いは強い。PGAツアーの試合の帰りに自家用ジェットでリーグ戦を終えた後輩たちの労いや激励にわざわざ向かい母校へ送り届けるなど密接な関係だ。

ラームはミケルソン兄弟の強力バックアップを得て伸び伸び活躍。エースとしてチームを牽引し数々の個人成績も挙げた。2014年9月には世界アマチュアゴルフチーム選手権(ゴルフ世界アマ)の第29回アイゼンハワー・トロフィーが軽井沢72で行われ個人優勝。スコアは23アンダーで、ジャック・ニクラスが1960年に樹立した記録を54年ぶりに更新する快挙。ニクラスはすぐにSNSを通じ祝福メッセージを発信、将来へ大きな期待を寄せた。

2015年にはアマでPGAツアーの「フェニックスオープン」に参加し5位。同年には学生の最高峰ホーガンアワードを2回目の受賞。学生時代に同賞を複数回受賞したのは史上初だった。また特別賞のマコーミックメダルも受賞するなどアマ界の頂点を極め、満を持してプロへと歩みだした。

ティムはラームのプロ転向と同時にコーチの職を辞しラームが契約したマネージメント会社に転職。その会社は、兄フィルが92年にプロ転向の際に大学ゴルフ部のコーチだったスティーブ・ロイが離職しフィルのために設立した。25年経った今もロイはフィルを徹底サポートしている。今度はティムがラームのコーチを経てマネージャーとして全力で支える。

■ セベ、オラサバル、ガルシア、そしてラームへ

ラームにとって絶対的な英雄は母国スペインのセベ・バレステロス。ローアマに輝いた今年の「全米オープン」最終日はバレステロスのトレードマーク、勝負カラーのブルーにちなんで青のスラックスでプレーした。「青を見てセベを思い出し、彼ならどうするか?と自らに問うため」だった。

スペインの先輩たちもラームへの思いは熱く、マスターズ2勝のホセ・マリア・オラサバル(50)らからも励ましや助言を受けている。ツアー9勝のセルヒオ・ガルシア(36)からはプロとしての成功の秘訣として「英語のブラッシュアップ、車の運転に注意すること、練習や試合後の丁寧な体のケア」など具体的な助言も。スペインからグローバルに活躍する次世代を育てようと懸命なのだ。

ラームのスイングはボディーターンを基本にし、安定感にあふれている。コンパクトなトップ、腕や手首の動きを最小限に抑えた曲がりにくいフォーム。それでも十分なパワーがあるので飛距離はトップクラス。6月の「全米オープン」では平均306ヤードでランク3位だった。

ラームの実力と勢いは目を見張る。3年前、出場権のなかったジョーダン・スピースが初優勝でトップ30のみ参加できる最終戦ツアー選手権に出場したように、ラームも9月には最終戦の舞台に立っているかもしれない。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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