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2015年 ウィンダム選手権
期間:08/20〜08/23 場所:セッジフィールドCC(ノースカロライナ州)

<選手名鑑169>タイガー・ウッズ

タイガー・ウッズ魂 プレーオフ進出を目指し最終戦出場へ

「ウィンダム選手権」はレギュラーシーズンの最終戦。来季シード権と4試合から成るプレーオフシリーズ進出をめぐり、フェデックスカップランク125位の攻防が繰り広げられる。ボーダーライン前後の選手にとってラストチャンスであり、何がなんでもミッションを達成しようと、必死の思いで挑む大会でもある。

今年はタイガー・ウッズ(39)がツアー20年目にして今大会に初出場することに驚いた。少し前に、ウッズは先週の「全米プロ」で予選落ちした場合、今大会には参加せずシーズンを終えるとの報道があったからだ。ウッズは通算79勝、メジャー14勝、永久シード権も得ている。体調を整えた上で来季から仕切りなおし、再スタートするものだと考えていたが、予想が外れて僕はうれしかった。ウッズは体調もゴルフの調子も芳しくなく、成績も目を覆いたくなる状況だ。メディアに「終わりの始まり!?」、「引退へカウントダウン?」などと報道されることもあり、見聞きする度につらい思いをしているだろうと思っていた。それでもあえて最終戦への出場を決めたのは選手の誇り、最後まで絶対にあきらめないという初心を、彼は今もしっかり抱き続けている証だと感じた。前人未到の快挙を達成し続け、栄華を極めた過去にケジメをつける。今回の出場は、現実を見つめ、しっかり今を生きていると思わせるウッズの決断だ。

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■ 今は忍耐の時-世界ランク285位、ポイントランク187位

ウッズは2000年に、年間9勝を挙げるなど最盛期を迎え、世界ランク1位も通算650週と、史上最長記録を更新した。好調時は数字が示すとおり、世界最高のプレーで人々を魅了した。しかし、09年以降、スキャンダルや負傷で下降線を辿っており、今季は経験したことのないドン底を味わっている。世界ランクは285位、ポイントランクは187位はキャリアワースト。10試合に出場し、予選通過は4回、予選落ち5回、棄権1回。ベストは「マスターズ」の17位で、トップ10フィニッシュはない。26ラウンドをプレーし、60台のスコアは8度のみ。ベストスコアは、7月の「グリーンブライアークラシック」初日と、自身主催の7月「クイッケンローンズ・ナショナル」2日目の“66”にとどまった。

一方、信じられないことに80台のスコアは3度もあった。自身初戦となった2月の「フェニックスオープン」2日目には、自己ワーストの“82”で予選落ち。6月の「メモリアルトーナメント」3日目には、“85”で自己ワーストを更新した。「全米オープン」初日は“80”で、メジャー大会での自己ワーストスコアを記録。数多くのトーナメント記録を樹立、PGAツアー20年目の節目のシーズンが、これほどまで屈辱的な内容になるとは彼自身も想像していなかったと思う。

一時期はとん挫していたゴルフ場設計も順調に進行、フロリダ州にレストランも開業するなどビジネスは好調だ。ますます意欲的に、真摯な姿勢でチャリティ活動に取り組み、スキャンダルで失った彼への信頼はV字回復を続けている。成績がここまで落ちたなら、いつ引退しても困ることはないのだが、それでも試合に出場を続け復調をめざし懸命に食らいつこうとする姿は見たことのない迫力だ。崖っぷちに立った今、PGAツアーでのプレーがいかに大切か、どれほど愛していたかを改めて知ったかのようだ。すでに10月に開幕する来季初戦「フライズドットコムオープン」の出場も発表し、積極的に試合に参加しようという気持ちが表れている。これまでウッズ自身の初戦は、1月終わりか2月初めの大会だったが、スケジューリングも明らかに違ってきた。

■ 自己最悪の“85” それでもプレー続行のプロフェッショナリズム

僕がウッズに選手としての誇りを感じたのは、6月の「メモリアルトーナメント」3日目に、自己最悪の“85”を叩いた時だった。大叩きの翌日は、何がしかの理由をつけて棄権する選手もいるのだが、ウッズは最終日もプレーを続け、72ホールを完遂した。あの時は、猛練習でできた左中指のマメが潰れ、痛みが激しくなりいつものグリップが出来ない状態だった。4月の「マスターズ」最終日には、目視できなかった木の根を打ち右手を負傷。相次ぐ負傷で手への負担は相当あった。それでも負傷を明かさず、棄権もしないでプレーを続けた姿は見事だった。棄権して無様な姿を見せないことより、プレー可能なら成績が悪くなろうが、最後まで全うすることこそがプロの本分だと思うからだ。

今季の負傷はそれだけではなかったが、彼は一切公表していない。成績の悪さを負傷や体調のせいにしたくないからだ。1月末の「フェニックスオープン」で“83”を打った時も、腰痛に苦しんでいた。翌週の「ファーマーズインシュランスオープン」では我慢できない腰の痛みで、棄権を強いられたことからも症状の度合が窺えた。「全米オープン」では左中指の潰れたマメが完治していなかった。僕は彼がプレーする時、まず最初に負傷箇所の有無をいつも心配してきた。ウッズは最も成功した選手であると同時に、最も手術歴、負傷歴のある選手。そして最も克服してきた選手でもある。今週もすべてが万全というわけではないだろうが、力を発揮してほしいと願わずにいられない。

デビュー当時「勝つためにプレーする」という発言が生意気だと先輩選手からバッシングされた経験から、記者会見でも当たり障りのない発言で終始するようになり、素顔は隠れてしまった。だが成績が下降を辿る中で、彼のスピリッツが浮き彫りになり、なぜ偉業の数々を成し遂げられたのかを改めて知ることができた。ロリー・マキロイジョーダン・スピースら、今のトップランカーたちは頂点を極め続けたウッズがどれほど努力し、どれほどすごかったのか、選手として何が最も重要なのかを感じ始めているに違いない。スコア以上に大切なことを示し続けるウッズは、やはりPGAツアーの至宝。だからこそ、数えきれないファンが必ず復活すると信じ、願うのだ。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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