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2015年 バルスパー選手権
期間:03/12〜03/15 場所:イニスブルックリゾート(フロリダ州)

<選手名鑑149>ダニエル・バーガー

■ バーガー・キングは時間の問題!?

今季ルーキーのダニエル・バーガー(21)は2週前の「ザ・ホンダクラシック」で惜しくも2位に甘んじた。メジャー3勝、43歳の大ベテラン、パドレイグ・ハリントンとのプレーオフ。2ホール目の17番(パー3)でティショットを池に打ち込み、惜しくも勝利に届かなかった。しかし、そのプレーぶりは今後の活躍を期待できる素晴らしい内容で、世界ランクもタイガー・ウッズを抜いて73位に急上昇した。

豪雨の影響で月曜日まで順延し、トップのイアン・ポールターに9打差でスタートした最終ラウンドのティオフ前は、優勝争いに加わるとは予想できない大差だった。バーガーは難コースのPGAナショナルを7バーディ、1ボギーの猛攻で、その日のベストスコアタイ記録の「64」をマークして通算6アンダーに伸ばし、首位の背中を捕らえた。バーガーはこの試合で突然に、優勝争いに顔を出したわけではない。これまでも惜しい場面を垣間見せてきた。

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昨年10月にルーキーとしてツアー初参戦を果たし、6試合目となる11月の「マヤコバクラシック」初日、後半の7ホールで5バーディを奪う猛ラッシュで、その日は「66」をマークした。わずか6戦目にしての首位タイ。4日間プレーした結果は51位に終わるも、大器の片鱗を見せた試合だった。年が明け「ソニーオープン in Hawaii」で13位、1月最終週の「フェニックスオープン」では初のトップ10フィニッシュを果たした。幾度の上位入賞と、プレーオフも経験し、キングの座(優勝)は時間の問題かも?と思わせるプレーぶりを見せている。

■ 飛距離を生かした“猛攻”が持ち味

バーガーの持ち味の一つは飛距離だ。「ホンダ-」直前の平均飛距離ランクは304.6ヤードで10位。飛距離を生かした「猛攻さ」が学生時代からプレースタイルだ。フロリダ大学2年生の12月、地元フロリダ州で行われた「ディキシー・アマ選手権」では2位に13打の大差をつける圧勝で飾ると、下部ツアーでプレーしていた2014年の「全米オープン」で、予選会から勝ち上がり出場権を獲得。初めてのメジャーで最終日に「66」でプレーして28位に食い込んだ。今年の「ソニーオープン-」最終日も、残り10ホールの時点から5バーディを奪い、下位から一気に上位へ浮上。プレーオフで敗退したものの「ホンダ-」最終日の猛攻も、バーガーのゴルフの真骨頂だった。

■ 父は米国テニス界の重鎮

バーガーは1993年4月7日、フロリダ州プランテーションで生まれた。フロリダ州立大学を2013年に中退し、プロに転向。同校では、現在ツアーの平均飛距離2位のブルックス・ケプカら、ロングヒッターを次々と輩出している。バーガーは昨季下部ツアーでプレーして、優先順位28位で、今シーズンからPGAツアーに昇格した。

バーガー家は父ジェイ、母ナディア、1女3男の6人家族。父は元プロテニスプレーヤーで、引退後は全米テニス協会の理事を務めるなど、テニス界に貢献する重鎮だ。国別対抗戦「デビスカップ」の副コーチや、2012年には、米国テニス五輪チームのヘッドコーチを務めた。ダニエルもテニスをしていたが、父は「自分の好きなスポーツを選べ」と強制することはなかった。ダニエルは13歳で初めてのホールインワンを経験し、ゴルフに夢中になった。高校時代は競技ゴルフをせず、勉学に専念したが、大学ゴルフ部で活躍できたのは「誰よりも努力せよ」という父の言葉を実行したからだった。

■ ユダヤ系選手期待の新星

バーガーは久々に登場したユダヤ系プロゴルファーの星だ。ユダヤ系プロゴルファーといえば、1999年に殿堂入りした女子のエイミー・オルコット(59)。近年では、2007年にメジャーを含む2勝のモーガン・プレッセル(26)、PGAツアー1勝、チャンピオンズツアー18勝のブルース・フライシャー(66)、1995年の「全米オープン」を含む15勝を挙げ、2010年の「ライダーカップ」主将にも就任したコーリー・ペイビン(55)がいる。メジャーでの優勝は、ユダヤ系初の快挙と、ペイビンは最も成功した男子選手のひとりだ。さらに、ツアー2勝を挙げているジョナサン・ケイ(44)、昨年9月、欧州ツアーでユダヤ系の父と、韓国系米国人の母を持つデビッド・リプスキー(26)が優勝し、次世代選手がつぎつぎと登場した。

僕はバーガーの活躍を見て、友人のデビッド・アールを思い出した。彼は米ゴルフマガジンとUSGA(全米ゴルフ協会)機関誌USGAジャーナルの編集長を歴任。1994年、パリ開催の「世界アマ・チーム選手権」取材中に心臓発作を起こして48歳の若さで急逝した。

スコアはプロにかなわないが、彼のゴルフへの情熱、造詣は世界一と言っても過言ではなかった。ウィットに富み、ユーモアセンスも抜群、僕は兄のように慕っていた。彼と最後にプレーした時のこと。「ダビデの星(ユダヤ人の象徴)だよ」と、見せてくれた犬歯には、小さなゴールドの星が埋め込まれていた。彼が去って20年、PGAツアーにユダヤ系の期待の新星、バーガーが現れた。もし彼が生きていたら、どれほど喜び、どのような記事を書くのかと思いを巡らせた。昨年バーカーの父は、ユダヤ系スポーツ選手の殿堂入りを果たした。そしてバーガーもきっと、父のように、スポーツ界で輝く星になりたいと願っている。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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