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<選手名鑑140>ビリー・ホーシェル

■ 奇跡の3週間&歓喜の48時間

ビリー・ホーシェル(28)は年間王者、複数回優勝者という最高のステータスで本コーナー2度目の登場だ。2015年シーズンはすでに始まっているが、仕切り直して新年最初の試合、王者への注目と期待は高い。

2014-15年シーズン終盤の3試合で見せた大逆転劇は、PGAツアーの歴史に残る奇跡の3週間と言っていい。4試合から成るプレーオフシリーズは69位でスタート。ホーシェルの大逆転は本人さえも驚くドラマティックな展開だった。2戦目のドイツバンク選手権では2位タイでフィニッシュし、ランク20位へ急上昇。次のBMW選手権で優勝し、ランク2位へ浮上。最終戦でも優勝を飾り大逆転、一気に年間王者に上りつめた。

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世界ランク1位で年間王者の最有力候補だったロリー・マキロイを一気に抜き去るラストスパート。優勝賞金144万ドル(約1億7千万円)に加え、年間王者のボーナス1000万ドル(約12億円)を獲得した。嬉しいことはさらに続いた。その2日後には結婚4年のブリタニー夫人との間に待望の第一子スカイラー・リリアンちゃんが誕生し父親となった。公私ともに忘れられない歓喜の出来事が、わずか48時間以内に次々と起こったのだ。12月に28歳になったばかりのホーシェル。昨年の今大会では6位タイとまずまずの活躍。今年はどのようなプレーを見せるのか楽しみだ。

■ まさかベッドで!悔しすぎた負傷

フロリダ大学時代は全米屈指の選手でカレッジゴルフ界のスター選手だった。2007年開催の欧米対抗戦ウォーカー・カップにダスティン・ジョンソンリッキー・ファウラージェイミー・ラブマークとともに選ばれ、当時、最強と言われたロリー・マキロイを主力とする英国&アイルランド連合に勝利し「米アマ界のドリーム・チーム」と評された。同試合は“近未来のドリームマッチ”への期待も高く、あの日から約8年後の現在、彼らは世界ランク上位に名を連ね、プロゴルフ界でしのぎを削っている。

ホーシェルは大学卒業の数か月後、09年12月にプロ転向。ライバルたちと次のステージで勝負だ!と意気込みQスクールに挑戦し、翌年のPGAツアー出場権を獲得したまでは順調だった。しかし、ルーキーイヤーで迎えた2010年、思わぬアクシデントで出鼻をくじかれることになった。手首痛で1、2月に出場できたのは、わずか4試合。しかもすべて予選落ちという惨憺たるありさまだった。3月には手術に踏み切り、大切なシーズンを棒に振った。ケガの理由は猛練習ではなく、“就寝の仕方”だったというのが、なんともいただけない。前腕をパジャマの下から入れる癖があり、寝返りの際に曲げた手首に重心がかかり、朝起きると痛みが走っていたという。当初は自然に治ると思っていたが痛みは増すばかり。思いがけない原因で大事に至ってしまった。似たケースは少なくない。ジム・フューリックは朝の歯磨き中のちょっとした動作で腰を痛めてしばらく欠場を余儀なくされ、ロバート・アレンビーは休暇中に船上で転倒し手首を負傷、等々。ホーシェルは早い対処が功を奏し復帰。寝相の改善にも成功した。

■ 激情を燃料に転換し最高の走りへ

ホーシェル躍進のキーは自己改革にあった。激情型で我慢が苦手、アクションも派手、じっとしていても感情が表情にでてしまう。燃えたぎる情熱を抑えきれず誤解をまねくこともあり、結婚した頃から心理学者のサポートを受け始めた。瞑想、呼吸法などの鍛錬を続けプレー中も「忍耐」を心がけるようになった。試合中に見せるアクションは相変わらずオーバー目だが、アマ時代に比べればかなり大人しくなった。それは闘志を内に秘めることができるようになったからだ。「もう批判は気にしない。むしろ情熱に火を注がれ起爆剤にしている」とタフな精神力を備えた。

フィジカル面でもビジェイ・シンの元トレーナーの指導で効果を感じ始めた。瞬発力が強化されスイングスピードもアップしたと実感している。「飛距離も3ヤード伸びた。これは大きい。クラブ半分の番手だしバンカー越え可能なプラス距離」と新境地にワクワク。激情を燃料に転換できるようになり、プレーにも安定感が現れた。変化を実感したのは2013年6月の全米オープンで4位タイと健闘し、メジャー初のトップ10に入った時。極限の忍耐を求められる難コースでの上位フィニッシュ。その経験で得た自信が昨季の大躍進へとつながっていった。

■ 蛸パン、カモフラ(迷彩)に続く今年の勝負スラックスは?

ホーシェルといえばトーナメント中に履くスラックスも要注目だ。2013年全米オープン最終日はオクトパス柄。それも大きな蛸が全体に50個近くもあしらわれていた。2014年全米プロ選手権最終日はカモフラ(迷彩)柄を着用。今年もどこかで勝負スラックスで登場するはず。さて、今シーズンはどんな絵柄だろう!?

ホーシェルにとって年間王者のタイトルはあくまで通過点。次の目標はメジャーや世界選手権での優勝だ。世界ランクも現在13位でトップ10入りも射程距離。今年も思いがけないビッグサプライズを起 こしてくれるのか。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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