<佐渡充高の選手名鑑 119>マット・ジョーンズ
■ ミラクル2連発の初優勝
豪州のマット・ジョーンズ(34)がPGAツアー7年目、155試合目となる今年4月の「チューリッヒクラシック」で悲願の初優勝を飾った。72ホール目の18番で15メートルのミラクルパットを決め、首位のマット・クーチャーを捕らえると、プレーオフに持ちこんだ。プレーオフ1ホール目は同じ18番で行われ、今度はグリーン右手前からチップインバーディを決めるミラクル2連発で劇的な初優勝を飾ったのだ。今季は豪州選手が破竹の勢いを見せる中、ジョーンズが4人目の優勝者となった。昨年の「マスターズ」で豪州人初の優勝を飾ったアダム・スコットの快挙が、豪州選手に刺激を与えたことは間違いない。中でもジョーンズとスコットは、少年時代から親友でもありライバルの間柄。最も刺激を受けた選手だった。
■ アダム・スコットと育んだジュニア時代
ジョーンズは1980年4月19日、オーストラリアのシドニーで生まれた。その約3カ月後、アダム・スコットがクイーンズアイランドで誕生する。ジョーンズは両親の影響で子供の頃からゴルフを始め、ジュニアの全国大会にも頻繁に出場し、注目ジュニアの1人として成長していった。スコットも同じ地区の注目選手として、二人は試合などで度々顔を合わせることから親しくなり、良きライバル、そして親友となった。スコットはプロゴルファーの父・フィルがコーチとして指導していたが、ジョーンズは決まったコーチがついておらず、母親ビッキーはその必要性を感じていた。
その頃、母は料理の腕を生かし、グルメフードの会社を設立したばかりだった。当時母が経営する会社のアシスタントにニコルという女性がいたのだが、彼女の夫であるゲーリー・バーターがティーチングプロだと知り、「15歳の息子、マットのプレーを見てほしい」と頼みこんで以来、現在も師弟関係が続いている。そしてコーチングの効果は覿面!オーストラリア、ニュージーランド両ジュニア選手権に優勝したスコットに呼応するように、ジョーンズも好成績を収めていった。
■ ジョーンズはアリゾナ、スコットはラスベガスへ
高校を卒業し、二人は米国へ留学。スコットはネバダ大学ラスベガス校へ、ジョーンズはフィル・ミケルソンら多くの著名選手を輩出しているアリゾナ州立大学に留学した。同校の2年先輩でゴルフ部のチームメイトは、2000年「全米アマ選手権」を制したジェフ・クイニーがいた。同部のエースだったイングランドのポール・ケーシーがプロ転向し、チームを抜けたばかりで、ジョーンズは強力な補強選手として迎えられた。2001年の「全米学生選手権」で同大学は6位に終わったが、個人優勝を果たすなど期待通りの活躍を見せた。その年の夏にプロ転向を果たし、米国に残りミニツアーで経験を積み始めた。
一方、スコットが進学したネバダ大学は、先輩にチャーリー・ホフマンら現在PGAツアーで活躍する強豪選手がゴルフ部に在籍し、米国最強のチームだった。しかしスコットは在籍1年数ヵ月で中退。その後アマチュアのメジャー競技などに参加した後、2000年に早々とプロに転向を果たした。
■ 明暗を分けたプロ転向後
プロ転向後、2人の足跡は少しずつ変わり、スコットはどんどん先に進んでいった。スコットは2001年の欧州ツアー「アルフレッドダンヒル選手権」で初優勝し、今ではツアーをまたぎ13勝。2003年からPGAツアーに本格参戦し、10月の「ドイツバンクUS選手権」でツアー初優勝を飾った。そして昨年、オーストラリア人として初の「マスターズ」で優勝を飾り、遂にメジャーチャンピオンとなった。
一方のジョーンズはミニツアーを経て、PGAツアーの下部ツアーへ。2007年に同ツアー賞金ランク7位に入り、翌年のレギュラーツアー出場権を獲得するまで、長い下積み時代を過ごした。ビッグステージに辿り着いたものの、優勝争いはほとんどなく、スコットとの差は広がるばかり・・・。しかし、スコットの「マスターズ」優勝を機に、ジョーンズに変化が現れ、トップ10に5回、自己最高位の2位と、キャリアベストの活躍で、スコットを追い上げ始めていた。
■ 家族の力!元ミス・アイダホの美人妻と2人の愛娘
「チューリッヒクラシック」での優勝で、初の「マスターズ」出場切符も獲得。数日後の開幕を目前に現地へ急行した。両親はオーストラリアから、兄ブレットは居を構えるニュージャージー州から、ジョーンズの妻子もアリゾナ州から応援のためオーガスタに集結した。
実は彼が優勝するまで、ツアーではジョーンズより彼の妻メリッサ(32)の方が目立っていた。彼女は09年ミス・アイダホに選出されると、同年のミスUSAでファイナリスト15人に選ばれるほどの、スタイル抜群の美女なのだ。友人の紹介で知り合い2012年11月に結婚。その4か月前には、長女ビクトリアが誕生している。この春には次女サバンナも誕生するなど、サポーターが増えるごとに彼の成績も上昇を続けている。