ジャスティン・トーマスがカパルアで高校時代のパターを蔵出し
ゴルファーとは懐古主義的な集団であり、PGAツアーの選手たちも例外ではない。我々はセットの一部として使用していた特定のクラブにまつわる温かい記憶に思いを巡らす。溺愛されるクラブであれば、時として何十年もバッグの中にとどまる。クラブによっては、長い空白期間を経てバッグに復帰することもある。
今年最初の大会となった「セントリー トーナメント・オブ・チャンピオンズ」では複数の選手が最新のテクノロジーが満載されたクラブをお披露目したが、ジャスティン・トーマスはジュニア時代に使用したクラブをゴルフバッグに入れてプレーした。
トーマスは起伏の激しいプランテーションコースのグリーンで、高校時代から所有するスコッティキャメロン サークルT 303 SSSブレードパターを使用した。確かに、これまでもトーマスがこのパターを携え、練習で使用することはしばしばあった。しかし今回は、重要な試合で下位ドラフトの選手にいきなり白羽の矢が立つのと同じような感じで、大切な実戦の場でこのパターに召集がかかったのである。
「時間にかなり余裕のあるときや、退屈なときに使っている物なんだ」。トーマスは木曜の「セントリー」第1ラウンドで3アンダー「70」をマークした後に述べた。「仮にしばらく大会がなく、友人たちとバックアップのセットを持ってゴルフ旅に出るのであれば、僕はこのパターをバッグに入れるだろうね。真剣勝負でない場合やバケーションにはこのクラブを持って行くんだ。大学では、このクラブで勝っているしね。良い思い出があるんだ。確か、高校の頃にはもう持っていたはずだね」
最後に競技の場でこのパターを使ったのはいつのことだったのか?
「多分、大学1年のときだったと思う」とトーマス。となると、それはもう10年以上前の話である。
では、どのようにしてこのパターは、世界のトップ20から17人が出場する2023年のPGAツアー初戦で、賞金が上乗せされ(1500万ドル)、優勝者に与えられるフェデックスカップポイントも上乗せされた(昨年から50ポイントアップし、550ポイント)大会である「セントリー」でスタメンの座を勝ち取ったのであろうか。この選択は明らかにシリアスなものであり、トーマスが言うには、使用するパターには「恐らく20~30本ほど」の選択肢があったとのことである。そして、この1本は最近、声高に何かを訴え始めていた。
「自宅では、とにかくこれを使うとパットの調子が良かったんだ」とトーマス。「ここ2年間で、僕の技術は格段に良くなったし、このパターを使うと、僕の技術的に悪い部分が露わになっていたんだ。まだ、その悪い部分は残っているけれど、少しは良い感じでやり過ごすことができるようになった。何よりも、パットは手に持った感触が良い物ですべきことだし、今はこれが最も手に馴染んでいるので、逆らわないようにしているんだ」
「セントリー」はトーマスが得意とする大会である。彼はこの大会で2勝しており(2017、20年)、昨年の第3ラウンドには、プランテーションコースのコースレコードタイとなる「61」をマークした。ただ、この木曜のオープニングラウンドは17番でのダブルボギー、さらには最終組であったことに加え、この日、ストローク・ゲインド・パッティングで28位(39人中)とパットが不調に終わったザンダー・シャウフェレと同組でプレーしたことで、出はなをくじかれる格好となった。
「まあ、大丈夫だよ」と、彼は練習グリーンへと向かう前に述べた。「6フィート(約1.8メートル)以内を2度外したけれど、10フィート(約3メートル)以上を4回決めたからね。きょうの午後はグリーンのコンディションがあまり良くなく、正確な転がりは得にくかったから」
これは、昨年強みである素晴らしいアイアンプレーを生かせるパターを模索する中で複数回パターを変えたトーマスにとって、最新の変更である。トーマスは昨季、ストローク・ゲインド・アプローチ・ザ・グリーン(グリーンを狙ったショットの貢献度)で8位にランクインし、このランキングでのトップ10入りを6年連続とするも、ストローク・ゲインド・パッティングは85位に終わっている。
伝統的で小粋なブレードパターは、2016年以降主にデュアルウィング型のマレットパターを使ってきたトーマスにとって、突拍子もない組み合わせに見えるかもしれない。しかし、実際のところ、彼はスコッティキャメロン ニューポート2タイムレスGSS 350ブレードパターを使用して2015年「CIMBクラシック」で優勝している。昨年はトーマスにとって、注目すべきパター変更を何度か行った一年となった。昨年1月の「ファーマーズインシュランスオープン」で、彼はショートスラントネックのマレットパターであるスコッティキャメロンX5ツアーに変更した。トーマスは2016年以降、マレット型を使用しているだけに、この変更は驚きには当たらなかった。
時を「BMW選手権」まで進めると、トーマスはまたしても一点物の超カスタムメードである最新のスコッティキャメロンT5プロトパターに乗り換えた。引き続きカスタムのナックルネックが配され、打音強化用のプレートも装着されていたが、長さは(彼の通常モデルより半インチ短い)34インチと短めだった。また、新しい“JT”ロゴが刻印され、配色はより濃い赤だった。
トーマスは最終的に、パターを長年の相棒である短めのスラントネックで組まれたスコッティキャメロンX5ツアーマレットに戻して一年を終えた。彼はこのパターを「ヒーローワールドチャレンジ」、「ザ・マッチ」、「PNC選手権」で使用し、2022年を締めくくった。ただ、誰もが知るように、新年のスタートは物事を変える絶好のタイミングである。では、今回の変更はどれくらい続くのか?それについては、成り行きを見守ることとしよう。
(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)