S.シェフラー使用アイアンの設計でタイガーが果たした役割
スコッティ・シェフラーは「ザ・プレーヤーズ」の直前にテーラーメイドと用具契約をしたことで、同時にタイガー・ウッズを含むツアースタッフの仲間入りをすることになった。
シェフラーの契約は、彼が「ウェイストマネージメントフェニックスオープン」と「アーノルド・パーマー招待」でPGAツアーにおける最初の2勝を挙げた直後に締結された。彼はこれらの勝利により、フェデックスカップのランキングで首位に躍り出た。
シェフラーとウッズの共通点は、用具スポンサーだけではない。彼らは同じアイアンを使用しているのである。シェフラーは数週間前にテーラーメイドと用具契約を結ぶまではフリー契約選手だったが、昨年から同社のP-7TWアイアンを使用し始めている。クラブにウッズのイニシャルが冠されているのは、彼がクラブの設計に携わったからである。彼はこのアイアンを使って、2019年の「マスターズ」に勝っている。
P-7TWアイアン誕生について詳しく知るには、ウッズが初めてテーラーメイドゴルフと契約した(そしてシェフラーがまだテキサス大学に在籍していた)2017年1月まで時計の針を戻す必要がある。
当時、テーラーメイドは骨の折れるタスクに直面していた。同社はウッズが競技で使用する上で手に馴染むアイアンセットを設計しなければならなかったが、それは見た目、打感、パフォーマンス、そして仕様についての彼の途方もなく高い要求を満たしたクラブでなければならなかったのである。
「キャリアを通じて、全ては両手とフィーリングに基づいてきた」とウッズは2019年のテーラーメイドによるYouTubeビデオで述べている。「父は常々、ゴルフクラブと直接接している唯一の場所は両手なのだと言っていた。もし少しでもズレがあれば、グリップの直径がほんの少し違うとか、グリップの中に気泡が入っているとか、そういう些細なことでさえ、僕は感じ取ることができるんだ。そして、ショットのフィーリングだね。僕はシャフトを通じたフィーリングから、打ったボールがどのウィンドウ(出玉の位置)に収まっているか分かるのだけど、その場所がズレていると、問題なんだ。それについて対処し、話し合い、直す必要があるんだ」。
テーラーメイドに加わる前、ウッズは長年にわたり名工のマイク・テーラー(かつてナイキゴルフに所属し、現在はアーティザンゴルフに所属)の作ったアイアンを使用してきた。ウッズはアイアンに関しては、かなり厳格であることで有名であり、彼は仕様の微細な違いでさえも感じ取れると言われている。
「タイガーの(かつての)仕様で我々が最も重視したのは、精度のレベルであり、どれくらい綿密で正確だったかというところです」と、テーラーメイド製品開発部長のポール・デムカウスキーは述べた。人の髪の毛というのは、6000分の1インチの細さです。彼の仕様はその数千分の1インチのところまで絞り込まれるのですが、彼はその差異を見分け、感じ取ることができるのです」。
そのレベルの精度が求められる中、テーラーメイドはプロトタイプを製造し始めた。予想通り、このタスクは簡単なものではなかった。
「当初、彼のために何本の6番アイアンを作ったか定かではありませんが、実際に弾道、打ち出し角、そしてスピン量が適正になるまで、8、9本は作りました」と述べたのは、テーラーメイドでツアーオペレーション副部長を務めるキース・スバーバロだ。
ウッズは先ず、2018年にテーラーメイドの“TWフェーズ1”アイアンを使い始め、その後、2019年に市販されることになる(そして、その2年後にシェフラーのバッグに入ることになる)テーラーメイドP-7TWアイアンへ変更している。
P-7TWアイアンが特別なのは、これがウッズの求めていた見た目、打感、そしてパフォーマンスに完全にマッチしているからである。それは、ブレード長、フェース高、重心位置、そしてソール形状の全てがウッズの好みに合致していることを意味する。さらにこのアイアンには、フェースの背後に重量のあるタングステンによるウェーティングが施されており、これにより、ウッズの好む深みのある打感と、弾道のウィンドウを実現している。
「スウィートスポットのすぐ後ろにタングステンを入れたことで、僕のアイアンゲームはさらに向上したんだ」とウッズ。「どういうわけか、打感に深みが出ただけでなく、さらに重要なことに、僕の弾道により一貫性が出るようになったんだ。吹け上がる感じがなくなり、より突き抜けるような弾道になった。僕はいつだって、硬めで深みのある打感を好むんだ。タングステンは、僕が求めていたそういう類の打感と、そういう類のリアクションをもたらしてくれた。何年もかかったけれど、このバージョンまで、これだというものには至らなかったね」。
テーラーメイドP-7TWアイアンは、テーラーメイドの“ミルドグラインド”機によるミリング工程を経て製造されているため、全てのアイアンの仕様が完璧に揃うようになっている。これにより、ウッズはアイアンセットが摩耗した際、何か欠陥があるのではないかとう懸念を抱くことなく、自信を持ってセットを交換することができる。
「磨耗したばかりのヘッドと全く同じ物が使えるという事実はかなり大きいね」と、ウッズはテーラーメイドのユーチューブ動画で述べている。「クラブとクラブの間、セットとセットの間に全く不一致がないんだ。今やミルドグラインドがあれば、毎週だって新しいセットを使うことができるくらいだよ」。
そして今、シェフラーはウッズが設計に携わったP-7TWアイアンをバッグに入れ、ウッズが3回優勝している「世界ゴルフ選手権デルテクノロジーズマッチプレー」に臨もうとしている(編注:最終成績は優勝)。ちなみにシェフラーの使用するトゥルーテンパーダイナミックゴールドX100ツアーイッシューも、ウッズと全く同じシャフトである。
ウッズのマッチプレーでの比類なき強さを鑑みると、このアイアンはシェフラーが昨年2位に入ったオースティンCCでのタイトル獲得への助けとなるかもしれない。
(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)