2014年 BMW選手権

チャレンジ満載の高地チェリーヒルズ攻略は戦術次第

2014/09/05 14:19

By Sean Martin, PGATOUR.COM

通常のコースよりも15%飛距離が出ているというロリー・マキロイ(Jamie Squire/Getty Images)

マイル・ハイ・シティの薄い空気は、飛距離が出やすい。クアーズ・フィールド(MLBコロラド・ロッキーズ本拠地)のマウンドに立つ投手に聞いてみれば、答えはすぐに返ってくるだろう(現在はボールに加湿処理を施し、以前より飛ばなくなってはいるが)。PGAツアーの「BMW選手権」は、デンバー近郊で開催される。だが、高地という条件が出場する69人に“爆弾”として襲いかかることはないだろう。

1923年に完成したチェリーヒルズは、ドライバーによるロングショットを容易にさせないクラシックなデザインのコースで、ティから遠い位置を狙うほどにフェアウェイ周辺のバンカーが厄介な存在となる。そして、何と言ってもロッキー山脈のふもとであるが故に、数ホールのグリーンは傾斜がきつい。アプローチショットの精度を上げる為にも、フェアウェイにボールを運ぶことが求められる。

フェデックスカップランキング2位で今大会に臨むロリー・マキロイは、「このコースでは遠くに飛ばせない。単純に遠くに飛ばすわけにはいかないんだ。きっちりフェアウェイにボールを運ぶ必要がある」と語る。

そう話したマキロイは、水曜日のプロアマでプレーした際、パー4の5番ホールで3番ウッドをティショットに使い、370ヤードを記録。第2打を8番アイアンでグリーンに乗せた。一般的にチェリーヒルズでは、他のコースよりも打球の飛距離が10パーセント伸びると言われている。ただ、気温により飛距離にも変化が見られる。

気温が上がる正午から夕方にかけては更にボールが飛びやすくなり、気温が下がる夜から朝にかけては飛距離が短くなる。朝夕で気温差は16度前後。朝には10度前後だった気温が、午後には26度前後にまで上がる。マキロイ自身は、弾道の高いボールを打つ為に、普段よりも15パーセント飛距離が伸びると分析した。

リッキー・ファウラーは、「計算が必要になるね。とにかく情報を信頼してプレーするしかない」と語る。

気温以外にも今大会で注目すべき数字は、『30』。日曜を終えた時点で上位30名のみが、プレーオフシリーズ最終戦となる「ツアー選手権byコカ・コーラ」出場資格を得る。

高地という条件により、選手、そしてキャディにもショット前に計算が求められる。今大会に出場する多くの選手は、「ドイツバンク選手権」最終日をプレーする為、月曜までボストンに滞在していた。それからタイムゾーンを2区画越えて西に向かい、木曜から大会が開催されるデンバーに移動。

トラックマンを使えば、自分のショットがどのくらい飛ぶか計算できる。ヤーデージブックにより新コースの特徴も掴めるだろう。今大会に出場する選手の中で、過去にチェリーヒルズでプレーした経験があるのは限られた人数のみ。何故なら、PGAツアーの大会は1985年の「全米プロゴルフ選手権」以降初となるからだ。

「新コースでのチャレンジは好きだよ」と話したグレーム・マクドウェルは、第一子誕生の予定と重なり「ドイツバンク選手権」を欠場した。チェリーヒルズには他の選手よりも1日早い月曜日に到着。「コースを分析する戦術が必要になると感じているよ。単純な他のコースとは違う、このコースでのようなチャレンジに挑戦したいんだ」と語った。

松山英樹ジョーダン・スピースは、2年前の「全米アマチュアゴルフ選手権」に出場した為、チェリーヒルズでの経験がある。松山はストロークプレーでの予選で敗退し、スピースは1回戦で現NCAA王者トーマス・ピーターズに敗れた。スピースのキャディを務めるマイケル・グレラーにも今コースで開催された6大会でバッグを持った経験がある。グレラーは現在ウェブドットコムツアーに出場したジャスティン・トーマスのキャディも担当しており、2年前のアマチュア選手権でトーマスが準決勝に進出した時もキャディを務めた。

モーガン・ホフマン、そしてキャメロン・トリンゲールの2人も、2009年にチェリーヒルズで開催された、アメリカとヨーロッパの大学選手による対抗戦、パーマーカップに出場した。

スピースによれば、2年前のコースと今回のコースは似ているらしい。

スピースは、「自分にとっては強みになる。リスクを承知でプレーすることで得られるものも大きいからね。中にはロングショットを打てる選手に有利にはたらくホールもある。それでも全体的に全員にフェアなコースだね。遠くに飛ばすほど、ボールを落とせるエリアは狭くなる」と話す。

ティショットでの選択肢は少なくない。力を抜いてプレーすれば、フェアウェイを広く使える。アグレッシブにプレーすれば高地の恩恵に与れるが、硬いフェアウェイにきっちりと運ぶのが難しくなる。

「自分次第でどうにでも変わるコース」と語ったのは、フェデックスカップランキング4位のジミー・ウォーカー。「アタックモードに入って前を追えば、好きなだけプッシュ出来る。色々なゴルフが出来るから良いね」と続けた。

マクドウェルは、コースの硬さがどの程度になるか次第としながらも、優勝ラインを10アンダーから20アンダーと予想。チェリーヒルズは全長7,352ヤードで、パー70となっている。

1番から7番まではバーディが多く見られるだろう。1番と3番はドライバーショットが生きるパー4で、その他のパー4ではウェッジを選択する選手も出てくるはず。マキロイは今週「63」か「64」は記録できると予想するが、それ以上の好スコアは中々出にくいだろうと話す。

「【59】を狙えると思うほどに良いスタートを切れる選手も出てくるだろうけれど、バック9には難しいコースもあるから、良いラウンドを保つのは厳しいと思うよ」。

バック9では、1960年の「全米オープン」でベン・ホーガンがチャレンジして失速した有名な17番の浮き島を含み、パー5の2ホールが選手達を待ち受ける。2オンを狙うには、フェアウェイ上に張り巡らされたバンカーを上手く潜り抜けなければならない。18番(477ヤード)のパー4はフェアウェイにきつい傾斜がついた難コースで、ボールが右から左へと池に向かって転がるレイアウトだ。

高地への対応を上手くできた者が優勝し、チェリーヒルズ・マスターの称号が与えられる。新たなチャレンジが多く見られるだろうが、優勝する為に必要な根本は変わらないと、ウォーカーは言う。

「立てた戦術を確実に実行して、良いショットを打つ。それだけさ」。

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