前年王者スピースの存在がハングリーな若手を刺激する
2014/07/10 14:20
現地8日(火)にTPCディアランでの練習として9ホールを回ったジョーダン・スピースは、数百名の若いファン(本人のカウント)が、彼のバブルヘッド人形を持っていたことに気づいたという。
またTPCディアランに車で移動する道すがら、20歳のテキサス出身は、アメリカンコミック“超人ハルク”のポーズを真似たような自身の巨大広告を目にした。その姿は、まるでハルクがサンドウェッジを器用に扱っているかのようだった。
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ポピュラーなバブルヘッド人形は、ハルクのように両拳を力強く握るポーズのもので、2013年「ジョンディアクラシック」最終日の18番ホールで、スピースがバンカーから決めた奇跡のチップインバーディ後のガッツポーズを思い起こさせる。印象に残るショットを決めたおかげでプレーオフに持ち込むことに成功し、5ホール目にザック・ジョンソン、デビッド・ハーンを振り切り優勝。この勝利がスピースの人生を変え、PGAツアーにも多少の影響を与えた。
初めてディフェンディング王者として迎える大会前の会見で、スピースは、「昨年の大会が自分のゴルフ人生を劇的に変えた。正直に言うと、もう何年も経ったかのように感じる」と、この1年を振り返った。
PGAツアー史上80年以上ぶりに誕生した10代での優勝者となったスピースは、フェデックスカップランキング5位、世界ランキング10位として今週の大会に出場する。ツアー初優勝以降、「マスターズ」、昨年の「ザ・ツアー選手権 presented by コカ・コーラ」を含む4度の2位入賞。そして4位とした5月の「ザ・プレーヤーズ選手権」を含む6度のトップ10という実績を残した。
2013年の新人王に輝き、昨年10月には新人では史上初となる「プレジデンツカップ」出場も果たすと、現在ライダーカップポイントでも5位という堂々たる成績を残し、ディアランに戻ってきた。
今大会初日には「全英オープン」優勝経験者のスチュワート・シンク、過去3度「ジョンディアクラシック」を制しているスティーブ・ストリッカーとペアを組む。スピースは前日の会見で、もし1年前にバンカーショットを決められなかったら、“どういう人生になっていたか”、もっと言えば“ならなかったか”について考えることがあると話した。
「いずれにせよ、『ウィンダム選手権』ではプレーオフになっていただろうね」と、初勝利から1ヶ月後に、同じく新星と呼ばれるパトリック・リードにプレーオフの末に敗れた大会について語ると、「でも、海外の試合(全英オープン)には出場していなかったと思う。きっと『全米プロゴルフ選手権』に出場していたんじゃないかな。だから、『ウィンダム選手権』のプレーオフの結果が、フェデックスカップのプレーオフ出場を大きく左右したかもしれないね」と続けた。
上記以外にも、スピースは、1年前の優勝がなければ、「プレジデンツカップ」にも、「ヒュンダイトーナメントofチャンピオンズ」にも出場することはなかった。本人が「世界のベストプレーヤーと戦う上で自信を持つことが出来た素晴らしい大会」と形容した、エリートレベルのプレーヤーが出場する大会にも出られなかっただろう。
「昨年の優勝が自分に与えてくれたことについては理解している」。本人は、こう結論づけている。
今大会にはプロに転向したばかりの初々しいパトリック・ジョーンズ、キャメロン・ウィルソン、スティーブン・イウムに加え、2012年のスピースと同様に、期待のアマチュア選手ジョーダン・ニーブルジェ、ボビー・ワイアットにも予選免除資格が与えられ、出場することになった。彼ら全員がスピースのような成功を収めたいと強く思っているに違いない。
スタンフォード大出身で、今年の5月にNCAAのタイトルを獲得したウィルソンは、「彼が良い道筋を作ってくれた。若い選手がPGAツアーに挑戦すると、越えられない壁にぶつかると言われることが多いけれど、ジョーダンは、単純に良いプレーをすれば結果を残せるという実例を作った。年齢や経験に関係なくね。トーナメントは究極の実力主義社会だよ」と話した。
だが、それもこれも、ノンメンバーの若手に出場する機会が与えられてこそ言えること。
スピースは昨年の大会最終日のラスト6ホール中5ホールでバーディを奪ったが、2012年にアマチュアとして出場していなければ、猛チャージを見せられなかっただろうと言う。
「この大会は若手にとって適切な大会だと思う」とスピースが言う「ジョンディアクラシック」は、大会ディレクターのクレア・ピーターソン氏が、有望な若手に予選免除資格を与えるというブランドを確立しつつある大会でもある。
同じくスタンフォード大出身で、全米でトップランクのアマチュアにまで成長し、今年の6月にプロ転向を果たしたロジャーズは、TPCディアランでの大会に3年連続出場となる。昨年は3日目に一時首位に立ち、最終的に15位タイという成績を残した。
ここ3週間で出場した3大会でトップ50と好調を維持するプロ1年目は、慣れ親しんだパー「71」というレイアウトのTPCディアランで開催されるキャリア4大会でも好成績をあげたいと意気込んでいる。ロジャーズもまた、スピースと同様の道を歩き、PGAツアーシード権の獲得、もしくは最低でも今秋のウェブドットコムツアー・ファイナルズ出場資格を得たいと話す。
だが、ロジャーズら若手の前には厚く、大きな壁が立ちはだかる。「ジョンディアクラシック」には、2013-14シーズンのPGAツアー大会で既に優勝しているハリス・イングリッシュ、クリス・カーク、スコット・ストーリングス、ラッセル・ヘンリー、ジョン・センデン、ベン・クレイン、そしてメジャー優勝経験のある10選手が出場する。
そこに「ジョンディアクラシック」マスターとも言えるストリッカーや、2012年の「ジョンディアクラシック」優勝者であり、昨年もプレーオフに進出し僅差でスピースに連覇の夢を打ち砕かれたアイオワ州シーダーラピッズ出身のザック・ジョンソンも出場する。ジョンソンは「マスターズ」優勝の経験も持つトッププロだ。
ジョンソンは、過去に2度予選免除資格を得て、地元で開催される大会で恩恵を受けた1人で、今年は過去どの大会よりもベテランを打ち破り、与えられたチャンスを生かそうと気合に満ちた若手が多いと感じているというが、スピースのような才能は極めて稀と語った。
「結果が欲しくて欲しくてたまらない、ハングリーな若手には慣れているよ。ただ、ジョーダンのような存在は特別。彼が去年から成し遂げ、今も続けていることは普通ではないから」。