全米オープン優勝の舞台に戻ってくるマクドウェル
ジャック・ニクラスがペブルビーチについて、もし、もう1ラウンドプレーするとしたらここを選ぶと口にしたことは有名だ。
グレーム・マクドウェルは今週、4年前に「全米オープン」を制して以来はじめて、モントレー・ペニンシュラCCに戻ってくる。
マクドウェルが人生最高の瞬間を味わった舞台へ戻るまでに4年も待ったことは奇妙にも思える。しかし、その決断には理由があった。
「多くの人に『2010年以降、一体なぜ戻ってこないんだ』と訊かれたよ」。今週の「AT&Tペブルビーチナショナルプロアマ」の舞台でマクドウェルは話した。「僕は『戻ることに何の意味があるんだい? 前回そこでプレーしたとき以上の感触をおそらく得られないんだ』というようなことを言ったんだ」。
「はじめてメジャー大会を制したあの週末の経験、感情を超えることは容易ではないんだ。だから、ここは本当に特別な場所なんだ」。
また、今週はマクドウェルにとって10週ぶりの試合となる。
1年前、マクドウェルはカリフォルニア海岸を数時間南下したリビエラで、シーズンをスタートさせた。結果は初日「73」、2日目「72」に終わり、週末はオフを過ごした。
「シーズン初戦を戦うコースとして、リビエラは極めて難しかった」とマクドウェル。「またプレーが本調子でない状態では難しかったね」。
「今回のプロアマでは、おそらく通常の大会ほど厳しいセットアップではないだろうから、ここに戻らない理由はないと思ったんだ。3ラウンドプレーして、最低でも週の終わりには自分が今どんな状態だかわかるだろうね」。
マクドウェルにとって、今年は本当に重要な1年だ。それは、昨年オーランド郊外にオープンしたレストランの成功や、昨秋に結婚したこととはあまり関係はない。
今年はライダーカップが行われる年であり、マクドウェルは欧州チームの過去5度の勝利と2度の引き分けに大きく貢献した。3度のシングルマッチでは一度も敗れていない。
しかし、既に米国ツアーのシーズンが4分の1を終了する今、北アイルランド出身のマクドウェルはここ2ヶ月以上試合を戦っていない。ライダーカップのランキングでも、ヨーロピアンポイントリストで25位、そしてワールドポイントリストで21位だ。
彼の上にはビクター・デュビッソン、ジェイミー・ドナルドソン、ジュースト・ルイテン、ジュリアン・ケン、モーテン・マドセンなどがいる。
彼等はいずれも、「ライダーカップ」の経験は全くない。まだ2月であることを考えると、マクドウェルは何も心配し過ぎる必要はないのだ。
「必要な数字に捉われ過ぎないようにするよ」とマクドウェル。「何をすべきかはわかっている。WGCとメジャー大会で良いプレーをして、シーズンを通して安定したプレーをするんだ」。
それは、スケジュールを見直し出場試合を減らすということも意味している。
昨年、マクドウェルは3勝を挙げた。2勝をヨーロッパ、そして1勝は米国で。しかし、マクドウェルは2013年が「クレイジーな1年」だったこと、そして6月半ばの米国オープン以降は壁にぶち当たったことを認めた。
昨年のマクドウェルは度々不安定な試合もあり、シーズン後半は予選落ちが続いた。
「気持ちが高まっている一方で、身体がついてこなかったんだ」と、マクドウェルはBBCに伝えている。
今年は、コーチのピート・コーウェン氏との特訓により時間を費やした。スイングの安定性と健康の維持に注力し、メジャー大会とタイトル防衛、フェデックスカッププレーオフ、そしてライダーカップ出場を見据えている。
「ただ自分のゴルフを取り戻そうとしているだけ」とマクドウェルは話した。
ペプルビーチは、スタートを切るコースとして良い場所だろう。
4年前の「全米オープン」のときとはコースのセットアップも大きく異なるが、かつての記憶を取り戻すことができるだろう。このような場所は多くはない。
しかしマクドウェルはまた、前回の勝利をキャリア最高の瞬間にするつもりもない。まだまだ今後のキャリアは長い。
「ペブルビーチでの勝利がキャリアのハイライトだと言うつもりはない。もっと上を目指している」とマクドウェル。「ここでもっと勝ちたいし、メジャー大会でもっと勝ちたい」。
「過去を思い出し感傷に浸るのにも、良いバランスがある。あの日の感覚を少しばかり思い出すことは楽しいよ」。
4年前の父の日に勝利を収めたとき、彼の視界はすぐに滲んだ。その日の午後、父とグリーンの上で抱き合い交わした会話すらも思い出せなかった。
ケニー・マクドウェルもまた、今回は息子のプロアマのパートナーとして、コースに戻ってくる。
「今はより良い場所にいる気がする」と、マクドウェルは話した。
ベプルビーチ以上に良い場所が、果たしてあるだろうか。