チャンピオンズツアー初戦を思い切り楽しむヒメネス
By Vartan Kupelian, PGATOUR.COM
普段と変わり映えしない休日を過ごすミゲル・アンヘル・ヒメネス。彼は「マスターズ」の後、自身の結婚など、ゴルフ以外のことをするため1ヶ月休暇を取る予定だった。
だが彼も多くのゴルファー同様、自分が熟知し、気に入っているゴルフコースでプレーする欲望にはあらがえず。スペインから世界を転戦する30名ほどのプレーヤーの1人として、新たな大会に挑戦した。
そして今週、TPCシュガーローフでの「グレーターグインネット選手権」でチャンピオンズツアーデビューを果たしたヒメネス。彼は先週の「マスターズ」を4位でフィニッシュしてから、すべてが好転している。オーガスタナショナルGCで魅せたフォームは、ここTPCシュガーローフでも健在だ。
生まれ故郷のマラガ(スペイン)では想像もできないような土砂降りの大会初日、ヒメネスはノーボギーの7アンダー、「65」をマークして首位に。2位タイに続くスティーブ・ペイト、ベルンハルト・ランガー、ケニー・ペリーの3選手に3打差をつけた。ヒメネスは5つのバーディに加え、9番目となる(インスタート)18番ホールでイーグルを奪うなど、ツアーデビュー初日を見事な成績で終えた。
「どう思うかって? 最高だよ」と、ヒメネス。
彼は今大会でかなりの注目を集めつつあり、またそれにふさわしい活躍を見せている。
「(ヒメネスを)見ていて楽しいよ」とペイト。「シニアツアーに来てくれて嬉しいね」。
一方のペリーは「彼はもっと残念な結果になると思ってたんだ」と話す。
「このツアーはかなりのんびりとしていて、肩の力を抜いた感じだね」とペリー。「雰囲気がガラリと変わってるから。ヒメネスが今日どんなプレーをするかなんて、知る由もなかった。正直なところ、彼が“65”をマークするなんて思ってなかったしね。凄い奴だし、素晴らしいプレーヤーだ。見ていて楽しいよ。彼はいつも“君の父親に”って葉巻たばこをくれるんだ。中には見たこともないほど、かなり大きなものもあるんだ」。
5人兄弟のうち末っ子のヒメネスは、基本的には独学で(ゴルフを)学んだ。彼はフアンら兄たちから学んだのだ。
「フアンは敏腕プレーヤーだった」と、ヒメネスは振り返る。「ツアーでのプレー経験はないけど、腕は確かだった。僕は自己流で学んで、常に兄たちを観察していたんだ。スイングのコントロールとか、必要に応じてね」。
そんなヒメネスがスイングの達人に協力をあおぐ際は、“肝心な点は相談しない”という。
「要となるような部分は、誰にも決めさせない」と、ヒメネス。「感覚だけ。球筋が適切でないと、正しい方向には飛んでいかない。するとどうなるか? おそらくボールははるか先に行ってしまうか、はるか手前で止まってしまうだろう。だから飛んでいく球を見れば、そのためにすべきことが分かるんだ」。
言い換えれば、それは自分のゴルフスイングを見て、感じるのに尽きるということ。エンジンをオーバーホール(見直し)するのではなく、微調整するのだ。
最高級でスピードの出る車を好み、“メカニック”の愛称で知られるヒメネス。その名は自動車の修理工場で働いていた経験にも由来する。
「修理工場は閉鎖したよ」とヒメネス。「練習場に通っていた時は、そこで仕事をしてゴルフコースに出ていたのさ」。
“ドライブ”を「修理する」から「打つ」ようになり、そして(ゴルフ)ボールをショットすることからフェラーリを運転するまでになったヒメネス。高級車はゴルフのプレー、また欧州やアジアのツアーで獲得した優勝賞金で購入したものでもある。今回の「グレーターグインネット選手権」が世界でのツアー通算21度目の優勝となる可能性もあるだろう。ヒメネスもゴルフを引退するまでに、優勝回数をさらに重ねていけることを望んでいる。「ここ15年は人生で最高のゴルフができていると思う」からだ。
彼が今週、ここでプレーしているのは単なる偶然の一致ではない。ヒメネスは当初、5月3日にスザンネ・スティルボさんと結婚の誓いを交わすなど、1ヶ月の休暇を取る予定だった。2人はスザンネさんの故郷のオーストリアの首都ウィーンで出会い、ヒメネスは今、PGAツアーや欧州ツアーでプレーする以外はここで暮らしている。
今年1月5日に50歳の誕生日を迎えたヒメネスは、「マスターズ」後のチャンピオンズツアーである今大会がアトランタ郊外で行なわれることに着目。少しの移動だけで、チャンピオンズツアーの小手調べと相成った。
TPCシュガーローフでの初日で、ヒメネスは理解した。自分をハッピーにしないことは一切やらないという彼にとって、この大会は賞金も高額、そして実に楽しいということが分かったのだ。初日を終えて雨具を脱いだ時、彼はそれを実感した。
「さてシャワーでも浴びて、葉巻でも吸うかな」。