DJは詰め切れず 世界1位譲るも「最高のゴルファーは自分」
◇メジャー第2戦◇全米プロゴルフ選手権 最終日(19日)◇ベスページ州立公園ブラックコース(ニューヨーク州)◇7459yd(パー70)
首位と7打差から出たダスティン・ジョンソンは、一時は1打差に詰めながらも終盤の2連続ボギーが響き、2打差の通算6アンダー2位で終えた。強風が吹く中「69」でブルックス・ケプカを猛追したが、2016年「全米オープン」以来になる2度目のメジャー制覇を逃した。
後半15番のバーディで、電光掲示板のスコア表示は首位と2打差に変わった。その直後、ケプカが14番でボギーをたたいて1打差へ。7打差逆転となれば大会記録に並び、51年ぶりのドラマが生まれる――。そんな期待は、各ホールに散らばっていたニューヨーカーたちを一斉に16番へ走り出させた。興奮は最高潮。大音量の“DJコール”が、鳴りやまない。
「あんまりボードを見ないようにしていた。12番以降は見ていない。多くの観客たちが僕の名前を叫んだ。ブルックスとの差を逆転できたら、それは偉業だと思っていた」。
向かい風の16番、流れを失った。フェアウェイセンターから194yd。「5Iでは厳しいと思った」と4Iを握り、低弾道のドローボールで狙ったが、ボールはグリーン奥の深いラフへ。2.5mに寄せたがボギーとし、ケプカとは再び2打差に。観客のため息が響き渡った。
17番(パー3)ティへ向かう途中も、自らを鼓舞するコールは止まらない。「Go DJ!」、「Come on DJ!」。静寂は、アドレスした直後のわずか数秒だけ。「Get in the hole!(カップに入れ)」の掛け声とともに放たれた第1打はグリーン右奥のラフへ。5mを外して2連続ボギーとし、勝機が遠のいた。
風も強まり、集中力を極限まで高めた終盤に、突じょ周囲で沸き起こった大声援。ジョンソンは17番の第1打について「(声援の影響は)一切関係ないよ。自分のスイングが悪かっただけだ」と即答し、「それは素晴らしい応援だった。こういう雰囲気でゴルフをするために僕らはプロであるんだ。顔を上げろ、と友達から早速連絡が来た。最後の3ホールだけだ。きょうのプレーに悔いはないよ」と振り返った。
トップに立っていた世界ランキングでは、優勝したケプカに抜かれて2位に陥落した。「ケプカは仲間だし素晴らしい選手」と称えた一方で、“世界最高のゴルファー”を問われると「まだ僕だと思っている。だから自分を選ぶよ」。全米屈指の難コースで、唯一4日間60台を並べた。敗れても、強い矜持がある。(ニューヨーク州ファーミングデール/林洋平)