2019年 RBCヘリテージ

「私をオーガスタに連れてって」 台湾の星と愛妻のゲキ

2019/04/22 10:15
伝統のチェックのジャケットを羽織るパン。小さなアジアのエリートだ

◇米国男子◇RBCヘリテージ 最終日(21日)◇ハーバータウンGL(サウスカロライナ州)◇7099yd(パー71)

パン・チェンツェン(台湾)が大混戦を制して待望のツアー初勝利をもぎ取った。2打差の首位を追いかけ、強風のコンディションを「67」で回り、通算12アンダー。今季すでに2勝のマット・クーチャーを1打差で振り切った。台湾勢のPGAツアー優勝は、日本ツアー6勝の陳志忠が1987年「ジェネシスオープン」を制して以来32年ぶりだ。

54ホールを終えて4打差以内に19人がひしめいたリーダーボード。パンは後半インで単独首位に立つと、第1打を右サイドの林に入れた15番(パー5)をボギーとしたが、すぐに16番でバーディを奪取。最終18番で第2打をグリーンに乗せてガッツポーズを作ると、プレーオフに備えていた練習場で吉報を受け取った。

「信じられない。僕はまだ進歩の最中なんだ。もう、10分も(祝福の)電話が鳴り続けているよ」。身長168㎝。体は小さくとも、その才能は若くして注目されていた。ゴルフ場で働く両親の影響でクラブを握り、ワシントン大ではエースとして活躍した。2013年には世界アマチュアランキング1位に君臨したことも。15年のプロ転向後、PGAツアーカナダ、ウェブドットコムツアーを経て17年から本格参戦するPGAツアーでも毎年シードを確保し、3年目に初勝利という順調なステップアップを見せている。

昨年8月、上位争いをした「ウィンダム選手権」では72ホール目で第1打をOBとして敗れた。当時話題になったのが、キャディが見つからず、急きょ起用したミシェル夫人を気づかって、多くのホールで自らバッグを担いだシーンだった。その愛妻は今週、会場にいなかった。理由はテキサス州で開催したジュニアイベントの運営に参加していたから。実は当初、パンもツアー出場を見送る予定だったが、夫人の「試合に行きなさい」という言葉で足をサウスカロライナに向けた。「奥さんの言うことを聞けば良い人生が送れる」と感謝しきりだ。

18番で第2打をグリーンに乗せてガッツポーズを作った

この勝利で来年の「マスターズ」への初出場を決めた。前週は夫婦でテレビの前にいた。タイガー・ウッズの復活優勝を観て「もう我慢できない。早く私を連れて行きなさいよ!」と強烈なゲキが飛んできたという。「彼女はもう試合でキャディするつもりはないんだ。でも、(マスターズ開幕前の)パー3コンテンストではやりたいって。今となっては約束できるよ」

今年の12月には、2年に一度の対抗戦「ザ・プレジデンツカップ」がオーストラリアで行われる。世界選抜入りに前進した事実を耳にすると、「頭になかった」と思わずビックリ。「キャプテンのアーニー・エルスのもとでプレーできるのは大変な名誉だ。アジアの子どもたち、ゴルフにも良い影響があるはず」。相手の米国選抜を率いるのは、選手兼主将としての登場も期待される憧れの人。“キャプテン・ウッズ”を迎え撃つ一員になりたい。(サウスカロライナ州ヒルトンヘッドアイランド/桂川洋一)

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