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2018年 全米オープン
期間:06/14〜06/17 場所:シネコック・ヒルズGC(ニューヨーク州)

レイモンド・フロイドもピンクフロイドも 全米OP開催地は名門コースだらけ

2018/06/14 19:15

ペブルビーチやサイプレスポイント、スパイグラスが点在するカリフォルニアのモントレー半島は唯一の例外と言える。しかし、そこを除けば、世界中でニューヨーク州ロングアイランドの東端ほど最高のゴルフコースが密集している場所はない。

今夏の「全米オープン」開催コースであるシネコック・ヒルズは、米ゴルフダイジェストが格付けするゴルフコース全米ベスト100で4位にランクイン。そこから32キロの範囲内には、シネコック近郊のナショナルGL(8位)とセボナック(41位)、さらにはフレアーズヘッド(19位)、そしてメイドストーン(72位)と、ベスト100に入った4コースが点在する。これらに加え、サウサンプトンにはシネコックに隣接する1925年開場でセス・ライナー設計の上質なコースや、新たに開場した素晴らしいコースなど、一生かかってようやくプレーしきれるほど多くの名門コースがある。

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ロングアイランドの先端にある小さな海辺の地区である、ハンプトンズに所在するコースのほとんどはプライベートコースだ。それも、単なるプライベートではない。一流で、高貴で、大金持ちのプライベートだ。一夏の別荘の家賃が100万ドルにもなり、派手なセレブたちや上院議員と財界の大物たちが挨拶を交わすハンプトンズにおいて、途方もない富と名声と権力がある。

2002年開場のザ・ブリッジはハンプトンズで最も新しいクラブの一つであり、入会金は約100万ドル。とはいえ、ここは偏狭や伝統的なところが一切ないクラブである。ジーンズやカーゴパンツの着用、あるいはキャップを前後逆にかぶることがOKとされているばかりか、それが自己表現の方法であれば、奨励さえされている。ガラス張りの現代的なクラブハウス。リース・ジョーンズ設計のコースとペコニック湾を臨む一番の絶景は、ダイニングルームではなく、そこがメンバーのたまり場であるという理由により、ロッカールームから一望できるようになっている。

ハンプトンズ最古(1891年開場)にして最上のゴルフクラブであるシネコックでさえ、その雰囲気はのんびりとしていて質素だ。9番グリーンから上がった高台にあり、コース全景やペコニック湾と大西洋を一望できるスタンフォード・ホワイト設計のクラブハウスは美しいまま維持されているが、初めてここを訪れる人は、建物がそこまで豪華ではないことに驚かされる。板張りの床、こじんまりとした部屋、建物を取り囲むポーチは、クラブの誰もが飾り立てることを望まなかった別の時代の名残である。

シネコックは女性ゴルファーの受け入れも活発で、クラブは近年、地元の人々を会員として招き入れてきた。入会の主な基準は何か? ゴルフへの愛である。メンバーには、同コースで開催された1986年の「全米オープン」王者であり、最近、サウサンプトンの自宅を1750万ドルで売りに出したレイモンド・フロイド、そしてピンクフロイドの創設メンバーであり、週2回コースでプレーするとされるロジャー・ウォーターズも含まれる。

シネコックを、コースの格と開催競技の歴史によりハンプトンズ最上のクラブとするならば、ナショナルとメイドストーンは限りなくそれに近い2番手といえる。

メンバーから「ザ・ナショナル」と呼ばれるナショナルは1911年に開場し、英国を代表するホールへのオマージュとして、チャールズB.マクドナルドにより設計された。ナショナルのメンバーは、現在少しの女性を含んでいるが、シネコックよりもやや全米志向になる。コースが混み合うことはほとんどないものの、メンバー同伴ではないゲストのプレーも許可されている。会社としてメンバーシップを持っている金融業者が4、5組のフォアサムを連れてくることもある。

シネコックやナショナルほどの敬意を得ていないメイドストーンだが、ビル・クーアとベン・クレンショーが手掛けた2012年の改修により、1924年にウィリー・パークJr.と弟のジャックが設計したオリジナルの価値と、無骨な美的感覚が復元された。シネコックから東へ27kmに位置し、ビーチに隣接したメイドストーンには、北米にある数少ない“真正”のリンクスホールがいくつか存在している。

「これからの人生で毎日、プレーや散歩をするコースを一つだけ選ぶとしたら、ナショナルかメイドストーンにするでしょう」と述べたのは、ロングアイランドで生まれ育ち、世界中のコースでプレーしてきたシングルハンディのロッド・アボフ氏だ。「でも、恐らくメイドストーンを選ぶでしょう。海沿いのホールもすばらしいのですが、内陸の水路沿いにあるその他のホールも同じくらいすばらしいのです」。

メイドストーンはハンプトンズで最もメンバーの“血統”に厳格なコースとして知られているが、これは戸籍上の血統ではなく、主にイーストハンプトンのコミュニティとの結びつきの長さで判断される。シネコックやナショナルとは異なり、メイドストーンは大きな水泳用のプールや多くのプライベート向けビーチ小屋を備えた総合サービス型の家族クラブ。そのメンバーシップは、家宝のごとく代々受け継がれていく。

1980年代にハンプトンズに巨額の資本が投下された後、アトランティック(1992年開場:リース・ジョーンズ設計)、イーストハンプトン(2000年開場:クーア&クレンショー設計)、そしてセボナック(2006年開場:トム・ドーク&ジャック・ニクラス設計)など、新参の設計者により高級でトップクラスのゴルフクラブが造られるようになった。

ロングアイランド海峡を見渡せる断崖の上にホールが造られた荘厳なフレアーズヘッド(2002年開場:クーア&クレンショー設計)は、厳密に言うとハンプトンズの範囲内ではないが、近隣にある。伝統的な価値観を重んじるこのコースは、距離計測器を禁じるほか、スコアカードに各ホールのヤーデージを記載しないなど、ハンプトンズのゴルフ的世界観を純粋に、端的なレベルで実践している。

セボナックも入会金が100万ドルのクラブの一つだが、敷地内に数多く建てられた4部屋のベッドルームを備えたコテージが、街の外から訪れるメンバーのコストを軽減している。こうしたメンバーたちは、必ずしも3000万ドルを支払ってハンプトンズに家を構えなくとも良いのである。

土地やクラブハウスに費やした支出の元が取れており、最近になって入会金が6ケタ近くに落ち着いた古いゴルフクラブもあるが、入会すること自体が難しい部分であると述べておく必要があるだろう。

ハンプトンズのゴルフクラブに入会待ちの人々にはポクサボーグをお勧めしたい。ここは主要幹線道路に沿った、常に混雑している練習レンジで、裏には9ホール(パー30)のハーフコースを備えている。夏場におけるハンプトンの交通量はかなり過密状態にあるため、時には自分のゴルフクラブへ向かう辟易するようなドライブを避け、ここでボールを打っている有名プライベートクラブのメンバーを見かけることさえある。

パブリックコースのオプションとして群を抜いているのは、サウスフォークの先端にあるモントークダウンズだ。ロバート・トレント・ジョーンズJr.により1968年に再設計され、その後、息子のリースにより改修された吹きさらしのコースは、バンカーの配置に優れた挑戦意欲をかきたてるコースである。さらに、ニューヨーク州のメンバー(住民を意味する)であれば、グリーンフィは半額になり、予約時にその他の特権も付く。“貴方はハンプトンズに属していない”。そんな言葉を、耳にすることもないのである。

文:ジョン・ポール・ニューポート
(米国ゴルフダイジェスト誌 2018年6月号掲載)

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