2016年 バレロテキサスオープン

米国から熊本へ 岩田寛はキャップに思い込める

2016/04/22 10:43
初日を1アンダーで終えた岩田寛。地震で被災した熊本に向けて、せめてもの思いを寄せた

米国男子ツアー「バレロテキサスオープン」が21日、テキサス州のTPCサンアントニオで開幕。午前中の大雨により約3時間半の中断を挟んだ第1ラウンドは、出場156人(棄権1人)のうち76人がプレーを残して日没サスペンデッドとなった。岩田寛は1バーディ、ノーボギーの「71」でホールアウトし、1アンダーの暫定40位タイとした。

スタート前の練習中に中断に入り、午後0時25分にティオフした岩田は穏やかなプレーに終始した。インから出た前半12番で8mのパットを沈めてバーディが先行。この日、動いた唯一のスコアだった。

両サイドがネイティブエリアとなっており、ショットの出来次第ではトラブルにつながるコース。今週のテーマである「結果にとらわれないこと」を守り、淡々とプレーした。「パターはきょうは3、4回しか納得できるものがなかった。でもそこまでチャンスについていなかったし、ミスショットがグリーンに乗っていたり、寄せやすいところに外れていた。贅沢は言わない」。

後半アウトはナイスパーセーブが続いた。第1打を右の林、2打目をグリーン左のバンカーに入れた1番。2m強のパーパットをねじ込んだ2番(パー5)。最終9番で6mのバーディパットをショートして悔しがったが、悪くない滑り出しだ。

この日、着用したキャップのつばには「Pray for KUMAMOTO」の文字があった。前週14日から熊本県を中心に九州で相次ぐ地震の被災地に向けた思いだった。「東日本大震災の時もそうだったんですけど…いまはまだ何をしたらいいのかハッキリと分からない。これから何をしたらいいかまだ考えています。でもまずは、コレだと思って…」

刺繍や布製のものではない。前夜、マネージャーがパソコンに打ち込んだ文字をプリントアウトし、丁寧にテープで貼り付けただけのものだ。日本に新たに発注していては、米国で身につけるまでに数週間かかる恐れもある。見てくれを気にしている時間はなかった。連戦の中で、いまできることだった。

「メッセージって難しいです」と岩田。「(被災者には)いろんな方がいるじゃないですか…。家が壊れた方もいれば、もっとすごいことを経験した方もいる。まとめてひとつのメッセージは思いつかない」。5年前の東日本大震災で被災した、仙台出身プロの正直で純な気持ちだった。(テキサス州サンアントニオ/桂川洋一)

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