最後にうなり声…V逸7位の松山英樹「自分にあきれた」
いまにも泣き出しそうな引きつった表情だけで、言葉なんていらなかった。「マスターズ」最終日、首位と2打差の3位から出た松山英樹は「73」とスコアを落とし、通算イーブンパーでホールアウト。風が止み、60台が続出した日曜日に7位へと順位を落とした。獲得を目指したグリーンジャケットには、ダニー・ウィレット(イングランド)が袖を通した。
悔しさに耐え続けていた松山が、ついにうなり声を上げてクラブを叩きつける素振りを見せたのは、最終18番の2打目を打ち終えたときだった。「フェアウェイから、何回も何回もグリーンを外しているようじゃ話にならない。自分に若干、あきれていました――」。それまでは、膝を折り、天を仰いで悔しがる場面が続いたが、最後はこらえていた自分への怒りが噴き出した。
チャンスが目の前にあっただけに、なおさら自分が不甲斐なかった。最終日は4番からボギー、ボギー、ダブルボギーとわずかな傷口からスコアを落とした。ハーフターン時点では、首位のジョーダン・スピースとは8打差がついていた。
「初日が始まるまでは、ショットも良い感じだったけど、試合が始まってからどんどん思い通りにいかなくなった」。1Wやロングアイアンは良いかわりに、ショートアイアンからミドルアイアンでミスが続いたことに、松山自身が驚いた。「自分が予想していた感じではなかったので苦しかった」。
それでも、7番以降はノーボギーで立て直した。12番(パー3)では4m、13番(パー5)では2打目を2m弱のイーグルチャンスへとぴたりとつけた。14番、15番でも3m以内からのバーディパットにトライした。「13番のイーグルパットが入っていたら、追いつくチャンスもあったのかなと思うけど…」。だが、ことごとくカップの底を叩かなかった。
パッティングについて「昨日の15番くらいからおかしくなって、修正しきれなかったのは事実」と素直に認めた。「去年のパッティングよりはまだマシだったかなと思うけど、どうやったら良くなるのか分からない」と、唇を噛みしめた。
初めての「マスターズ」での優勝争い。未知の体験は、新たな課題を松山に植えつけた。
「悔しいですね。何なんでしょうね、考えたいです」。米CBSのコメンテーターは、必死に感情を押し殺す松山を表して「これは学習経験だ」となぐさめた。勝てる力があったことは間違いないが、今年はなにかが欠けていた。もしくは単に待つ時間が必要なだけかもしれない――。
日本人として史上初めて「マスターズ」で2年連続トップ10入りを果たした松山だが、まだ足りない。その“なにか”を求めて、自分を高める1年間がまた始まる。(ジョージア州オーガスタ/今岡涼太)