2016年 マスターズ

涙と微笑みと 2度優勝のトム・ワトソンが「マスターズ」に別れ

2016/04/09 12:15
これが最後のマスターズ。トム・ワトソンは涙で大会との別れを惜しんだ(Harry How/Getty Images)

8日、オーガスタナショナルGCの急勾配の18番フェアウェイをグリーンに向かって歩いてくるトム・ワトソンを、満場のパトロンたちがスタンディングオベーションで迎えた。カットラインにはわずかに2打及ばなかったが、ワトソンはこれを自身最後の「マスターズ」とすることを決めていた。

「もう18番グリーンに向けて5Wや3Wを打たなくてよいと思うと嬉しいよ」と、ワトソンは微笑んだ。「それが、もうここでプレーしないという理由のすべてだよ。若い子たちが7Iや8Iで打っていくのに、自分は3Wでなんとかグリーンに載せようと頑張っている。もう、ここは自分の居場所ではないってことだ」。

1977年、81年と2度グリーンジャケットを獲得した。今年で「マスターズ」出場は43度目。オーガスタでの一番の思い出は、77年の初優勝後に最初の師匠であるスタン・サースク、そしてもう1人の師匠バイロン・ネルソンに礼を言うために、キャビンの部屋に一人籠もって、順番に電話をしたことだという。「あれは特別な瞬間だった。マスターズを勝ったというオーラがその後の自分のプレーに大きな自信を与えたけど、まずは自分を育ててくれた人たちに感謝しなければならなかった」。

18番グリーンに上がってきたワトソンは、右拳を胸に当ててから、両方の人差し指でパトロンたちを指さして、心からの感謝を表した。その目には、こらえきれない涙があふれていた。

「もう、子供たちを相手にプレーするのはこれが最後になると思う。でも、年寄りたちを相手にはまだ戦うよ。優勝を目指して戦うスリルが好きだし、勝つことのプレッシャーを感じるのが好きだ。予選通過を目指すことにも確かにプレッシャーはあるけれど、それは少し違っている。それがやりたいことだし、今までやってきたことだ」

温かい拍手が、いつまでも66歳のワトソンを包み込んだ。(ジョージア州オーガスタ/今岡涼太)

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