2014年 WGCアクセンチュアマッチプレー選手権

デイVSデュビッソン 23ホールの決勝戦

2014/02/24 12:28
23ホールに及ぶ決勝戦を制しガッツポーズを作ったデイ。

タイガー・ウッズが2003年大会に樹立した27歳の最年少優勝記録更新を争った決勝戦は、歴史のひとつに数えられる熱戦だった。アリゾナ州ダブマウンテンGCで開催された「WGCアクセンチュアマッチプレー選手権」。ジェイソン・デイ(オーストラリア)と、ビクトル・デュビッソン(フランス)が5ホールに及ぶ延長戦を含む戦いを繰り広げた。

終始優勢に進めていた26歳のデイの失速が要因ではない。死闘を呼んだのは、間違いなくフランスの新鋭の驚異的な粘りだった。3回戦からバッバ・ワトソングレーム・マクドウェル、そしてこの日午前の準決勝でアーニー・エルスと、百戦錬磨のメジャー王者たちを破ってきた23歳。未知数の力が一気に発揮されたのは終盤だった。

ドーミーホールとなった17番、フェアウェイバンカーから残り174ヤードをピン奥4メートルにつけると、バーディパットをねじ込んで1ダウンに迫る。18番ではグリーン左バンカーからの第3打を1メートルに強に寄せてパーを奪取。3パットボギーとしたデイと土壇場で並び、エキストラホールへ持ち込んだ。

再三のピンチをショートゲームで耐えてきたデュビッソン。ひげを蓄えた口元にニヒルな笑みを浮かべながら、少し早足で歩く姿に飛ぶ声援はどんどん大きくなっていく。

プロ転向後、初のマッチプレー出場ながら準優勝のデュビッソン。米ツアー参戦への道が大きく開けた。

驚愕のプレーは延長2ホール目の9番だ。第2打をグリーン左に曲げ、小さなサボテンが生息するネイティブエリアに打ち込んだ。しかし砂煙を上げて放ったアプローチは、ピンそば2メートルにピタリとつけてパーセーブ。相手を思わず苦笑いさせてしまうほどの忍耐力を見せつけた。「ビク(ビクトル)の粘りは信じられなかった。ジョーダン・スピースと若い頃のタイガー・ウッズ以外に、あんな若手は見たことがない」

しかし最後は、追いつかれてもリードだけは一度も許さなかったデイが意地を見せた。

勝負を決めたのは5ホール目の15番。343ヤードのパー4はこの日、ティが10ヤード以上前に設定された。ドライバーで1オンを狙ったデュビッソンが右サイドへ曲げた瞬間、「Dead(ダメだ)」とつぶやいたのを聞いて、スイッチを入れ直したデイ。「彼はバーディを獲れない。良いティショットを打つんだ。彼と同じポジションには絶対に打たない」。デュビッソンは深い右ラフからの第2打を大きくオーバー。一方のデイは右のエッジから1メートル強に寄せて、勝ち切った。

6日間で113ホール、この日は午前中に準決勝でリッキー・ファウラーとの戦いを制し、計39ホールをプレーした。「長い一日だった。今朝は4時45分に起きたんだ」。デイは昨年、準決勝で敗退した雪辱を晴らした格好だ。

一方、敗れたデュビッソンはプロ転向後初のマッチプレーで善戦したにも関わらず、悔しさを隠さなかった。「本当に残念だ。最後の方でミスショットが響いた。(延長3ホール目の)10番では完璧だと思ったアプローチが変な方向に跳ねた。思ったところに打ったのに…でも、これがゴルフコースだ…。勝つチャンスはあったのに」。絶妙のアプローチの連続にも「僕に失うものは無い。打てるところから、100%のショットをするだけだった」と、意に介さなかった。

それでもフランスの新鋭は想定フェデックスカップポイントを315点獲得し、スペシャルテンポラリーメンバーとなる権利を得た。今季の残り試合は、制限なしにスポンサー推薦で試合に出場できる。さらに秋の「ライダーカップ」出場へも大きく前進したことに目を輝かせる。「今週学べたことはたくさんある。きっとライダーカップでも役に立つはずだ」。それに対し「僕はライダーカップを見たことが無かったけれど、今年は絶対に見たいと思う」とエールを送ったデイ。

大会史上最年少となる平均年齢24.5歳の決勝戦だった。(アリゾナ州マラナ/桂川洋一)

2014年 WGCアクセンチュアマッチプレー選手権