2011年 全米オープン

三田村昌鳳が語る・・・全米オープンとは?(2)

2011/06/08 16:55

冷徹かつ公平な競技委員との戦い

今年の舞台コングレッションで行われた前回大会、1997年のチャンピオンはアーニー・エルスだった(Craig Jones/Getty Images)

マスターズでは、戦う、競い合うという挑戦的な選手のコメントが少なく、むしろ、いいゲームをしたい。いいパフォーマンスをしたいという表現に近い。でも全米オープンでは、きっぱりと勝ち抜く、戦う、競うというアスリートの感覚が強い。そして全英オープンでは、自分自身のメンタリティ、じっと我慢してチャンスを待つ。あるいは、流れに逆らわないでチャンスを掴むというニュアンスがある。選手たちは、壮絶な戦いに挑むというテンションで戦いの舞台にやってくるのである。

だから、プレーをする選手と、その舞台を設定する冷徹な、むしろ好意的に考えれば、公平公正な競技委員の格闘がある。それがコースセッティングだ。

印象的だったのは、1998年の全米オープン。場所は、オリンピックCC。18番ホールのグリーンでの出来事だった。

ペイン・スチュアートが2日目、ピンの上1メートル強につけたボールをパッティングしたら、3メートル以上ゴロゴロと転がってしまった光景である。またカーク・トリプレットは、上からパッティングしたボールが、なかなか止まらずに転がっていくので思わずパターでその転がりを止めてしまった。もちろん2ペナルティである。彼は、その2ペナルティのお陰で予選落ちしてしまった。

「あんなのアンフェアだ!」

ジョン・デーリーがふてくされた。

そのとき全米ゴルフ協会の責任者が、プレスルームに呼ばれた。デビッド・フェイ氏だ。

「残念ながら、あのグリーンは非常に小さく4日間のカップを切る位置は限られてしまいます。けれども、奥からパッティングしたボールが止まらないというのは、2日目に限ったことではありません。月曜日の練習日から状態は同じです。そのことは参加した選手の誰もが知っている事実です。全員が知っているということは、アンフェアではないということです。事実、ジャック・ニクラスは、2日目サイドヒルからの12メートルのパットを決めて予選に通過しています。グリーンを狙う第2打は、およそ154ヤード前後です。その距離からカップの奥ではなく手前に落とす技術を持ち得ている選手がこの大会に参加しているはずです。

トリプレット君は優秀なゴルファー。来年、頑張ってくれることを期待します」……そうあっさりといって終った。

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