【GDO EYE】石川遼が3度目のマスターズで得たもの
石川遼にとって3度目の出場となった2011年「マスターズ」。初の予選突破を果たし、通算3アンダーの20位タイという結果は、紛れもなく石川の成長を感じさせるものだった。同時に、未知の世界だった決勝ラウンドを体感し、多くの刺激を得る4日間になったことだろう。
「消極的なゴルフを露呈してしまった」と後悔を滲ませた3日目。「ガラリと雰囲気が変わった。選手たちからは上に行く気持ちが強く感じられ、ギリギリで予選を突破しても優勝を諦めない人ばかりだった」。身上とする攻めのプレーを心がけているつもりでも、それがボールに伝わらない。対して、回りの選手たちの優勝にかける強い執念。「自分が日本でプレーすると“どこに打つの?”と思われがちだけど、逆のパターンだった」。最短ルートやピンをどんどん狙う“石川流”の攻める姿勢も、オーガスタの決勝ラウンドでは輝きを放たない。「逆に、“リョウはそんなに逃げるのか”と思われたかもしれない」。
その決勝ラウンドで優勝争いを演じたのが、2つ年上の同世代、ロリー・マキロイだった。頭文字をとり、以前はリッキー・ファウラーを交えた『3R』と比較されることも多かったが、近年はマキロイに大きな差をつけられているのが実情だ。今週も、同じ決勝の舞台ながらライバルの背中は遥か先にあった。「自分が2年後に、あのプレーができているのか、一昨年くらいから考えてはいます。努力次第では、僕もあと2年であそこまで行く可能性はあると思うし、行かなければいけないと思う」と、無意識にも言葉に力がこもる。
そして最終日の18番ホール。石川が姿を現したとき、本来ならばグリーンを十重二十重に囲んでいるはずのパトロンたちの姿が少ない。ちょうど隣の9番グリーンには、優勝争いに加わったタイガー・ウッズがいた。パトロンたちは席を離れて移動し、タイガーに釘付けになっていたのだ。「18番はちょっと寂しかったけど、あと2時間ぐらいスタートが遅ければ、僕が9番ホールにいたはず。来年はそれを目指します」。初の予選通過の安堵と喜びなど、すでに過去の事となっていた。
ホールアウトした瞬間から、石川の目には4度目の「マスターズ」しか見えていない。今週、中嶋常幸からは「来年は優勝争いをするつもりでやりなさい」との言葉をもらったという。幼少の頃から想い描く“20歳でマスターズ優勝”という夢。「僕以外にも、できると思ってくれている人がいるんだと自信になりました」と目を輝かせる。刺激と会得、そして自信。夢の実現に向けて、確かな一歩を踏み出した。(編集部:塚田達也)