2024年 ZOZOチャンピオンシップ

これは生で見る価値あり! ミンウ・リーの地を這う「スティンガーショット」

2024/10/26 14:00
アイアンのコンタクトが上手い*こちらはスティンガーではありません

◇日米ツアー共催◇ZOZOチャンピオンシップ 2日目(25日)◇アコーディア・ゴルフ習志野CC(千葉)◇7079yd(パー70)

打撃練習場でミンウ・リー(オーストラリア)の球を見ていてびっくりした。試合会場にある奥側の打撃練習場には飛球線上に1本の高い木(推定20m)があり、その木の半分ぐらいの高さで飛んでいく低い球を打っていたのだ。まさにタイガー・ウッズがよくロングアイアンで多用していたスティンガーショット。

リーのバッグに入る19度のドライビングアイアン(キャロウェイ「X-FORGED UT」)で打った球は彼の背丈ほどの高さで飛び出し、吹き上がることもなく低いままギューンと前に飛んでいった。その後は3番ウッドに持ち替え同じような地を這うような低い球を打つ。周りで打っていた日本人選手も打つのをやめて、球の行方を見つめていたほどだった。

5番パー3に向かって歩いてくるミンウ・リー

リーの練習をつぶさに見ていた石井良介プロ(「しだるTV」でおなじみ。ギア、スイングに精通)が同じく目を丸くしていたので、そのスゴさを解説してもらった。「ロングアイアンだとそもそもちゃんとコンタクトするのは難しいですが」と前置きしつつ、「上手く打てたとしてもスピンが入って吹けやすいですし、抑え込もうとするとスピンが足りなくてドロップすることもある。でも彼はボールを浮かせつつも、弾道を低く抑えられている。まさにミサイルみたいな球です」と脱帽。

「そもそもスティンガーを打つには振り遅れつつも左手を掌屈(手首を手のひら側に折る)させていく動きが必要ですが、やりすぎるとロフトが立ちすぎてボールは浮かなくなる。その度合いが絶妙。さらにアームローテーションをしっかりするタイプなのに、フェースがスクエアかつ下を向く時間をしっかり作ってコントロールしている。かなり高度な技術ですよ」

ローテーションは多めなタイプだがフェースの管理が上手い

コースでそのスティンガーを見てみようと、石井プロとともにリーのラウンドについていったが、スティンガーショットが発動したのは6番ティショットのみ。しかも番手はドライバーだったから、また驚いた。「昨日、今日で約18ホール分を見て回りましたが、試合ではほぼ普通の打ち方でしたね。そもそも練習場で低い球を打っていたのはスイング矯正の意味合いが強かったのだと思います。スイングが良くないと低く抑えた球は打てませんから」

なんでも石井プロ、昨年の「ZOZOチャンピオンシップ」で彼のスティンガーを見て虜になり、スイング動画をスマホに入れてクラブの動かし方を参考にしてきたという。「彼のスイングは特別に大きいクセはなく、非常にニュートラル。高いトップからクラブを寝かせてプレーン上に下ろしてくる。そこから極端にクラブが寝ることもないから、低く抑えることもできるんです」と感心しきりだった。

クラブが極端に寝ることなくプレーン上をなぞる

果たしてアマチュアに真似できる所業なのか。「アマチュアの方でもアイアンの高さを意識した練習は大事だと思います。皆さん、球を上げる練習はしますが、低く打つ練習をしている人は少ない。低い球を打とうとすると意外と球は低くならず、『いかにボールが浮きやすいものなのか』に気づくと思います。球を右に置いたりロフトを立てたり、低く打つやり方が分かってくれば、普段すくい打ち気味の人などはクラブの入り方などが分かってアイアンのコンタクトが良くなってくるはずです。その打ち方でボール位置を徐々に左にズラしていけば、球は自然と上がってきますからね」(石井プロ)

うーん、なるほど。球が上がらなくて苦労しているが、低く抑える練習をすることで球を上げられるようになるということか。なかなか奥の深い話。いずれにしても、ミンウ・リーの地を這うスティンガーが見たかったら、スタート前に彼がいつも陣取る奥の練習場に直行してほしい。(千葉県印西市/服部謙二郎)

手が長さを生かしてハンドダウンに下ろせる*こちらはスティンガーではありません
アイアンのコンタクトが上手い*こちらはスティンガーではありません

2024年 ZOZOチャンピオンシップ