盗難被害に負けず 松山英樹は急造タッグで好発進と“気づき”
◇米国男子プレーオフ第1戦◇フェデックスセントジュード選手権 初日(15日)◇TPCサウスウィンド(テネシー州)◇7243yd(パー70)
時間の経過とともに気温は上がり、ホールアウト直後の午後5時には38℃に到達した。松山英樹が流した大汗をぬぐったのは大きく「JAPAN」のロゴが入ったタオル。銅メダルを獲得した「パリ五輪」直後の試合で、首位に1打差の2位で滑り出した。
好発進に繋がったラウンドはボギーから始まった。出だし2ホールで4m以内のチャンスを外して迎えた3番(パー5)、左ラフからの2打目を右サイドの池に入れた。上位選手のほとんどがアンダーパーを連発する展開で、続く4番(パー3)ですぐに挽回。第1打をピンそば2mに絡めてバウンスバックした。
2021年には三つ巴のプレーオフを戦ったコースで、その後は快調にスコアを伸ばした。練習日から握っていたスコッティキャメロンの新しいパターを投入。2つスコアを伸ばして入った後半12番で10mを沈めて4つ目のバーディを決めた。
6mを流し込んだ14番(パー3)からは3連続。フェアウェイからの2打目を左サイドのバンカーに入れた17番のボギーで首位タイから陥落しても、7バーディ、2ボギー「65」のラウンドを「良いゴルフができた」と満足げに振り返った。
パリから米国に戻る経由地の英国ロンドンで財布の窃盗被害にあった。市街地で食事をした直後に早藤将太キャディと黒宮幹仁コーチはビザが発給されたパスポートを盗まれ、日本に一時帰国。再発行を急ぐ中、今後の合流について「毎日連絡を取っているが、コーチはムリだと思う。ただ、将太はもしかしたら(ビザを)取れるかもしれない」と明かした。
緊急時に助けてくれたのは今春、久常涼をサポートした田渕大賀(たぶち・たいが)キャディ。急造タッグはプレーオフシリーズの大事な初戦でまずはしっかり機能した。前半7番では8mのパットがカップに入る前に歩き出し、バーディを見届けた松山。「大賀と話し合って、思ったところに、思ったように転がっていった。『外れたら仕方がない』と歩き始めたら、読んだ通りに入ったので良かった」と呼吸も合った。
早藤キャディを本格的に起用した2019年当初の気持ちも思い出したという。「大賀と組んで新鮮だった。将太と初めて組んだ時もこういう感じだったかなと。こうやれば、将太ともケンカしないで済むかなと思った」と笑った。「早く元のチームでプレーできるように」と願う一方で、「バラバラでも、やることは変わらない。自分のやるべきことをやる」とキッパリ。窮地での強さは折り紙付きだ。(テネシー州メンフィス/桂川洋一)