「すごい価値」の滑り込みから1年 松山英樹が好相性?コースで最終調整
◇米国男子プレーオフ第1戦◇フェデックスセントジュード選手権 事前情報(14日)◇TPCサウスウィンド(テネシー州)◇7243yd(パー70)
ティオフを翌日に控えたプロアマ戦で松山英樹は何度となく顔をしかめた。フルスイングをした後、腰に手をやって耐える。銅メダルを獲得した「パリ五輪」では不思議と感じなかった痛みが米国に戻ってぶり返した。大事には至っていない様子ながら、居残り練習は行わずにコースを後にした。
五輪を終えた前週は、自宅のあるフロリダ州で調整した。暑さに強いバミューダ芝のグリーンとラフに向き合うのは久しぶり。会場入りしてからもウェッジをいくつか試しながら、厄介な芝への対応に時間を費やした。
「難しい…」。時折、眉をひそめてショートゲームに注力する姿を見せたが、TPCサウスウィンドでは「WGCフェデックスセントジュード招待」時代の2019年初ラウンドで「65」をマーク。21年には三つ巴のプレーオフを戦った。そして、なんといっても23年最終日、バックナインでの猛チャージが光る。
故障にあえぎ不振を極めた昨季、このプレーオフシリーズ初戦にはフェデックスカップポイントランク57位で入った。第2戦「BMW選手権」出場のためにはランク50位に飛び込む必要があり、3日目終了時点でも圏外にいた。その翌日、後半12番までにスコアを伸ばせず、突破は絶望的と思われた終盤6ホールで1イーグル3バーディと反撃。大会を16位で終え、ランクを47位に引き上げた。
プレーオフ第2戦進出者には、高額賞金のかかるシグニチャーイベント(昇格大会)の翌年の出場権が付与される。仮に初戦で“敗退”した場合、松山も直後のフェデックスカップ・フォール(秋季シリーズ)をはじめ、今季のスケジュールも流動的になる恐れがあった。2月「ジェネシス招待」での2年ぶりのツアー優勝にも、銅メダルにも手が届かなったかもしれない。「50位以内に入れたのは、想像していた以上にすごい価値のあることだったんだと、終わって改めて感じた」という言葉にもうなずける。
ことしはランク8位で堂々と全3戦のシリーズにやってきた。レギュラーシーズンをトップ10で終えた選手への、順位に応じたボーナス240万ドル(約3億5280万円)もゲット。1位でプレーオフを迎えた17年の翌年にできた制度で、ようやく報われた。「オリンピックが終わってゆっくりした部分もあって、あまり状態は良くない。でも、試合が始まれば関係ないですし、まずは初日のティに立てるように。うまくいけば上位争い、優勝争いもできる」。さらに膨らんだ自信と、コースとの相性の良さにかけたい。(テネシー州メンフィス/桂川洋一)