「誰よりも準備した自負がある」コーチが明かす松山英樹が狙って獲ったメダル
◇パリ五輪 男子 最終日(4日)◇ル・ゴルフ・ナショナル(フランス)◇7174yd(パー71)
オリンピックイヤーの2024年、松山英樹を中心とした“チーム”の中で「パリ五輪」という目標が明確に設定されていたわけではないという。身体の痛みに悩まされ、PGAツアー最終戦「ツアー選手権」の出場が9年連続でストップして迎えたシーズン。大目標のメジャーはもちろん、2戦目の進出ラインとなるフェデックスカップポイントランキング50位の当落線上でプレーオフシリーズに入らないために毎試合を必死に戦うことだけを考えていた。
2月の「ザ・ジェネシス招待」で2年ぶりの優勝を遂げ、再び階段を上る過程で臨むことになった2大会連続のオリンピック。出場を決めたからには、松山の覚悟も尋常ではなかった。黒宮幹仁コーチは「全英オープン」を終えた後のロンドンでのオープンウィーク、パリに入ってからの調整を振り返り、「このオリンピック期間中、誰よりも準備した自負はあります」と言い切る。
オリンピック前週の土曜日、27日の午前6時頃から練習場に一番乗り。風が強く、地面が硬いスコットランドでの2週間で出たクラブが上から入るクセを直し、少し下が軟らかいル・ゴルフ・ナショナルで“刺さりすぎない”ように調整してきた。「“メダルを獲るか、それ以外か”しかない。彼(松山)もそこに懸けて準備していたと思う」と胸中を代弁した。
試合中、黒宮氏はスイングを見て驚くことがあった。「珍しく、結果にこだわった打ち方とかもしていたんです。『スイングが悪いから結果が悪い』じゃなく、『スイングが悪くても成績を出さなきゃいけない』っていうことに特化した4日間ですよね」。スイングにエラーが出ても何とかして“枠”に収め、スコアメークにつなげていく姿勢。常に理想のスイングを追い求めてきた松山の割り切りは、そのままメダルへの執念に置き換えることができる。
それでも苦しんだ3日目のホールアウト後。左に寄り過ぎていると感じたボール位置などを調整してショット面の立て直しにメドをつけると、すでに最終日に向けてカップの切り直しと芝刈りを始めていた練習グリーンの一角を使わせてもらってパッティングのポイントを整理。誰よりも早く始めたトーナメントウィークの準備は、誰よりも遅くまで続いた。
「メダルを狙って獲れたことで、彼も自信になったと思う。でも、(スコッティ)シェフラーと(トミー)フリートウッド、まだ上に2人いる。再来週からも(ツアーで)一緒に戦っていかなければいけない選手ですし、彼も満足していないと思う。どうやって彼らよりうまくなれるかを考えて頑張りたいですね」。日本男子ゴルフ界初のメダルという快挙も通過点。最高峰PGAツアーでの戦いは、2週後の「フェデックスセントジュード選手権」(テネシー州TPCサウスウィンド)から再開する。(フランス・ギュイヤンクール/亀山泰宏)